飛ぶパンツ
僕は、パンツを履かない。小学校のときに、「なんで古館君はパンツ波いてないの?」と聞かれたことが2度ほどある。僕はこう真顔でサトシ君に言った。「うちは、貧乏だから、パンツも買えなんだよ。」と。あれから、40年。僕も、パンツを十分買えるくらいの年齢になった。今日もパンツをベランダに干した。小学校のときに誰もが履いていた純粋向くな真っ白の白鳥が飛びたつ前のようなブリーフ。僕のマンションの10階から見える景色は、そんなに良くない。ビルの隙間から時折見える青空が唯一僕のお気に入りだ。居間の座卓に座って寛いでいると、そのわずかな隙間から見える青空に僕は癒される。季節の変わり目は天候が荒れやすい。今日も強風が吹いている。 ベランダの白鳥のようなパンツをしまおうとした、そのとき、「あ!!」斜め向かいのマンションのベランダに若奥さんだ。僕は、やはりお金はあってもパンツはいまだに履かない主義だ。ただ、パンツを干さないと、パンツを履いていない男と思われるのがたまらなく嫌で、いつもパンツは履いていない。奥さんは目を点にしながら、僕を訝しげに見ている。パンツを履いていない事が信じられないような顔をしている。その時、奥さんの手元から、黒のランジェリーのパンティーが風にゆられて飛んでいった。「アディオス!」僕はそのパンティー目掛けて手を伸ばしながら、すかさず、後ずさりして、窓を閉めた。居間に座り、小さな声で座卓を前に、ごちそうさま・・と、一言つぶやいた。