シッコ
シッコ コレクターズ・エディション(DVD) ◆20%OFF!話題になったマイケル・ムーア監督のシッコ(sicko)。アメリカの医療問題を追究したドキュメンタリーです。アメリカでは,5,000万人が無保険だそうです。1万8,000人が無保険のために死亡しているそうです。無保険がもたらすさまざまな不幸を実際の事故や病気をした人へのインタビューから明らかにしています。たとえば薬代のために働く79歳の男性は,メディケアでもカバーされないそうです。太りすぎややせすぎのために糖尿病やがん患者は,保険会社には入れないのだそうです。保険会社は費用を支払う段階で,過去5年の病歴を調べ上げて,既往症の申告漏れを指摘します。そのようにして,なんとかして費用の支払いを抑えようとします。1971年にHMO(健康保険維持機構)ができて,医療費を抑える政策がとられます。すなわち,この制度で患者は受けた医療サービスの量にかかわらず,一定の保険料が支払われます。これによって,国民の受ける医療の質が低下したといいます。これに対して,ヒラリーは国民皆保険を提示した時期があります。しかし,米医師会が社会主義的であると批判して,この制度は実現することもありませんでした。一方,海外の医療制度についてもヒアリングを行って,アメリカの医療制度の問題点を浮き彫りにしようとしています。カナダでは医療費はタダです。助け合いの精神で国民皆保険が支持されています。イギリスのNHS(国民保健サービス)では,入院費が無料で税金で賄われています。フランスもケアが充実していて,高い税金の代わりに,特に子供の保育料が低く抑えられています。アメリカでは,医療機関が手術費用を支払えないホームレスを支援センター前に降ろすといった人権無視ともいえる行為がとられています。------------------------------------おもに患者の視点からアメリカ医療制度の問題を指摘しています。アメリカでは徹底した個人主義がとられていると感じました。民間保険会社が市場原理のもと,製薬メーカーとともにできるだけとれる患者から保険金や薬代を巻き上げて,できるだけ支払いを抑制する方針をとっています。医師は保険会社の傘下にあって,支払いを抑制できる医師を優遇しているようです。本来の「保険」とはほど遠く,しっかり保険金を支払っていたとしても,補償が約束されているとは思えない状況です。チェーンの歯で2本の指を失った人の事例はショッキングでした。病院から手術費用が高いことを聞かされます。患者は悩んだ挙句に,1本の指を手術してもらって,もう1本については諦めたと語っていました。保険会社の未払い問題は日本でも生保を中心に見られます。何らかの厳しい審査体制がとられなければ,複雑な保険の内容を巧みに利用して,あえて支払いを抑えるといった抜け道が許されてしまいます。国民皆保険制度をとっている日本でさえ,保険料を払えずに仮の保険証も発行されなくなった人たちがすべて自己負担で賄わなければならない状況にあるようです。医療制度の設計の前提となる理念として,人の命を自分で守るのか,みんなでお金を出し合いながら助けるのか,の2つの方向性があると思います。その方向性についてもう一度国民の合意形成をとる必要があるように思います。