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カテゴリ:漫画・アニメ
★ 『 薔薇王の葬列 』 菅野文 (2013年~) 電子書籍無料版およびレンタルにて、既刊6巻まで読了。 シェイクスピアの史劇、 『ヘンリー六世』、 『リチャード三世』 を原案とする歴史ファンタジー。 中世 (15世紀) イングランドにて30年に及んだ内乱、「薔薇戦争」 下での王や諸侯の愛憎ドラマを描く。 ぶっちゃけ、薔薇戦争の概要も覚えてないし、シェイクスピアも読んでないので、Wiki で触りを調べたところによると、シェイクスピア劇では 「醜い、せむしの極悪王」 として描かれた 『リチャード三世』 を、両性具有の女性的なキャラクターに置き換え、薄幸な生い立ちや恋愛要素を絡めて描いているので、歴史フィクションをさらに少女漫画風味にアレンジした作品といったところだろう。 前の連載作品 『オトメン』 とは違って、殆どコメディ要素のないシリアスものだが、菅野さんの端麗なキャラデザにはよくハマっている。 『オトメン』 で指摘した全身像やデッサンの手抜きも (よくよく見れば気になるところはあるものの、) かなり解消されている。 ただ、ここまで大胆に設定を改変するなら、薔薇戦争とかリチャード三世とかでなく、全くの異世界ファンタジーでもいいんじゃねえか? …って気がしないでもない。 以前から指摘しているが、歴史上の実在の人物や事件を題材にしてしまうと、いくらフィクションと銘打っても、結末 (史実) の改変には限界があり、どうしても先が見えてしまうからだ。 しかも、この作品に関しては、基本設定など着想は面白いが、 「男として生きる女(?)」 だの 「運命の出会い」 だの 「すれ違いの恋」 だの 「結ばれえぬ悲恋」 だの、メロドラマ的な要素が満載で、まだストーリーの途中ではあるが、私個人的には、今のところ 「展開が予想の範囲内」 という言葉がピッタリくる感じで、今一つ 先行きが気にならない。 作者が、リチャード三世の人物像を根底から覆し、彼 (彼女?) の葛藤を主に描きたいのは分かるのだが、その部分がやたらと冗長な割に、リチャード以外の人物については、もっと面白く掘り下げられそうなところをみすみす描き逃してしまっている感があり、当時の事件や時代背景の説明も十分とは言い難いので、歴史物語としては 「惜しい」、と言わざるを得ない。 こういう言い方は余りしたくないが、これまでのところは、あくまで 「少女漫画の範囲を超えていない」 印象だ。 とは言え、この作品を読むと、史実としての中世イングランド史や、シェイクスピアの 『リチャード三世』 そのものに興味を持つきっかけにはなると思う。 今後の展開に期待したい。 <関連日記> 2012.5.19. 篠原千絵 『 天は赤い河のほとり 』…… 功罪相半ばの歴史漫画 2012.5.21. よしながふみ 『 大奥 』…… 閉ざされた世界の 「種馬」 の悲哀 2012.8.17. 横山光輝 『 三国志 』…… 勧善懲悪の戦国物語に辟易 2012.9.5. 神坂智子 『 蒼のマハラジャ 』…… 「中途半端」 が残念な歴史フィクション 2013.2.28. 竹宮惠子 『 天馬の血族 』…… 大作家 最後の大長編 (?) 2013.8.20. 上田倫子 『 リョウ 』…… 歴史フィクションの限界 2013.9.10. 惣領冬実 『 チェーザレ 破壊の創造者 』…… いい意味で 模写名人的な漫画 2014.8.31. 幸村誠 『 ヴィンランド・サガ 』…… 「単純無垢」 が招く 戦争の残酷さ 2014.7.9. 星野浩字 『 臏(ビン)~孫子異伝 』…… 心優しい軍師が魅力の歴史ファンタジー 2014.9.5. 萩尾望都 『 王妃マルゴ 』…… 着飾った少女の視点で描く戦争 2014.9.7. 細川智栄子 『 王家の紋章 』…… 「完結しないこと」 にイラつく ファンの皆様の心情をお察しします 2015.6.11. ヒラマツ・ミノル 『 アサギロ ~浅葱狼~ 』…… 新撰組ファンでもなんでもないが、人物描写に引きつけられる 2015.10.20. 伊藤悠 『 シュトヘル 』…… 殺戮の時代に 「文字」 が持つ 真の役割と救い 2016.1.6. 菅野文 『 オトメン (乙男) 』…… 「キャラ設定ありき」 なのに、キャラ萌えできない 2016.10.21. 岩明均 『 ヒストリエ 』…… 遅筆に付き合うにも限界が
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最終更新日
2017年01月04日 21時02分44秒
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