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2017年03月18日
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カテゴリ:漫画・アニメ
★ 『 さよならソルシエ 』 穂積 (2012~13年)



電子書籍無料版およびレンタルにて、全2巻読了。


フィンセント・ファン・ゴッホの 画家としての成功の秘密を、弟 テオドルスの視点で描いたフィクション。


生前、無名で貧しかった画家ゴッホが、画商勤めの弟テオから経済的支援を受けていたことは割合 有名な話で、ゴーギャンとの確執 (耳切り事件) などと共に、その生涯は様々な著作や映画等で紹介されてきた。

私自身、ゴッホの 「人となり」 に興味があり、一時期、関連する著作を読み漁ったこともあるが、この作品がゴッホ兄弟の話だとは、読み始めるまで知らなかった。


作者である穂積さんは、デビューコミックス 『式の前日』 (2012年) と、この 『さよならソルシエ』 で、相次ぎ複数の漫画賞 (「このマンガがすごい!」 など) を受賞している新進気鋭の漫画家で、その分 レビューも多いが、賛否が分かれていることからも推察できる通り、ゴッホ兄弟の 「新解釈」 と言うにしても、かなり荒唐無稽なストーリーなので、マジメな美術ファンは過剰な期待をして読まない方が身のためだ。


かと言って、「ゴッホ兄弟を冒涜している」 とか 「史料をちゃんと読んだのか」 などと怒るのはお門違いで、そもそも、「史実」 と言われるものですら、全ては後世の他人による 「解釈」 に過ぎず、24時間365日、ノーカットで追った映像記録でも無い限り、真実かどうかは本人ですら断定できない (本人の記憶も絶対ではない)。


歴史上の人物や出来事に関しては、「フィクション」 と断った上でなら、どう歪曲しようと基本的には許されると、私は思う (子孫や関係者は不愉快だろうが)。

実際、ゴッホの兄弟関係にしても、私がチェックした範囲でも かなり解釈には幅があり、徹底した 「美談」 から、逆に、フィンセントの不遇の一因を 弟夫妻の責と見るものまで様々で、たかだか死後100年ちょいの人物でも、勝手に多様なドラマを仕立て上げられるものだ。


勿論、この 『さよならソルシエ』 に関しては、人物設定からして、いくら何でも強引な解釈だと私でも分かるが、「教科書に明記された歴史ですら、疑う余地がある」 という問題提起になりうる点で、意味はある。

極端な話、テオとその妻子が ゴッホの作品を全て処分してしまっていたら、ゴッホという画家は歴史上、「存在すらしなかった」 ことにもなりかねなかったのだ。


そういう意味で、「読んではいけない」 などと息巻くレビュアーは、そもそも、歴史フィクションや漫画を語るには 頭が固すぎる、と私は思う。


ただ、この作品が 「傑作」、「面白い」 とまで言えるかどうかについては、また別の問題だ。


着想やあらすじ自体は悪くはないのだが、キャラクターの魅力や行動原理については描写不足で、私は感動や衝撃を受けるまでには至らなかった。


弟テオを主人公に据えたにしても、フィンセント本人の描写が 「雑」 過ぎて、感情移入できないまま 急転直下で完結してしまい、肝心のテオの心理にも 結論の意外性にも、全く説得力がなくなってしまった。

1巻の段階では、エピソードも具体的で、多少、期待が持てたが、テオの裏の顔や行動原理だけ描いて満足してしまったのか、はたまた飽きてしまったのか、「打ち切り」を疑われても仕方がないくらい、まとめ方が巧くない。


実は数年前に、高評価の短編集 『式の前日』 も読んだのだが、決して悪くはなかったのだが、正直、ここで感想を書くほどの思いには至らず、すぐに内容も忘れてしまった。

絵柄は青年漫画的で万人受けしそうだが、同時に、内容や作風も 「『モーニング』 あたりの青年誌に載ってそう」 な印象で、余り新しさは感じられなかったように記憶している。


また、『さよならソルシエ』 後の連載作品、『うせもの宿』 の1巻も 無料になっていた際に読んでみたが、これも、基本設定は悪くないが、一つ一つのエピソードは 「どこかで読んだ」 感 満載で、2巻を読みたいとまでいかなかった。


まあ、「どこかで読んだ」 と感じてしまうのは、私が漫画読み過ぎだから ということもあり、さほど漫画を読まない人には 「読みやすくてオススメ」 と言えるかもしれないが。


漫画は、「作画」 という時間の掛かる作業を経る分、連載中に設定が修正されたり キャラクターに厚みが出て、ストーリーも予想外に発展するところが長所だと思うのだが (話を拡げすぎておかしくなった作品も多いので紙一重ではあるが)、この作家さんの場合、どうも、あらすじ通りに描くだけで精一杯な印象で、短編の時は良くても、長編については イマイチ、折角のセンスを出しきれてないように感じた。



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最終更新日  2017年03月19日 00時03分22秒
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