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カテゴリ:トルコ的生活/わたし的生活
7時前、義兄から様子を心配する電話が入った。 「コンクリート屋は来たかい?職人たちは働いてるかい?」 私は、6時半まで待ったが来ないので、電話をかけたこと。電話で起きたので、まだ来ないだろうことを伝える。 義兄は、オーケー、分った。私がコンクリート屋に電話しようと言ってくれる。 私も親方の携帯に電話を入れてみた。 背後で金槌の音がして、仕事を始めていることが分った。 義兄からは再び電話が入り、コンクリート業者が出るのは7時半頃になること。ネジャットもあと15分ほどでベレッキを出ることを教えてくれた。 とすると、結局コンクリートの充填は8時頃ということか。 そういえば、昨日の予定も8時からだったもんなあ・・・・。 確信犯というべきか。 通行許可が6時から8時だから、8時に滑り込めばオーケーって解釈なんだろう。 これがトルコ式なんだよなあ、6時に行くなんてバカだった、と私は自分をあざ笑った。 子供たちを学校に送っていくと、すぐにミニバスに乗り込む。 途中で、再び義兄から電話が入った。 「ネジャットが現場に着いたんだけど、鉄筋に問題があるって。 構造検査業者はどこにいるか?って言ってるよ」 私は、一遍に不安になる。 構造検査業者って・・・そんなの、初耳だ。 「構造検査なら、ベレディエ(区)の人が1~2度来てる筈だけど・・・。 構造検査業者だなんて・・・私、分らない」 私は、一気に暗澹たる気分になってきた。 問題・・・・構造検査業者・・・ 今日はコンクリートは流せない?まさか! 私が息せき切らして現場に着いたのは、9時にもなる頃だった。 すでに、ミキサー車とポンプ車は待機している。 ネジャットは私を認めると、すぐに上にあがってきて、と私を招く。 型枠の完成した階段を注意しながら登ると、すぐに手招きされた。 「ほら、こっちの柱、見てごらん。鉄筋が本来なら奥まで通ってなくちゃいけないのに、こんなところで終わってる。 これじゃあ、地震で揺れたときに、支えられないよ」 指し示された柱を見ると、確かに、鉄筋の何本かが柱の中心を通っていない、それどころか、柱を縦に貫く鉄筋と十分交差しないほど短い状態で終わっているのだ。 「ほら、こっちも同じ」 ネジャットがチェックしたところでは、そのような状態の箇所は3箇所ほどあった。 「で、構造検査業者はどこに居るの?」 どこに・・・・と言われても、私には個人で構造検査業者を呼ぶ必要があること自体、まったく知らなかったのだ。 「それって、どうしても必要なの?」 「もちろんだよ。建物を建てるときは、必ずあいだあいだで点検に来ないといけないんだよ。 来てるはずでしょう?」 自分の無知さ加減を突きつけられ、呆然となる私。 頭は働かず、「私には分らない」と首を振ることしかできない。 「オズギュルという人が居て、その人がいろいろ手配してるはずなんだけど・・・」 そう言って、私は彼の携帯を鳴らした。 「申し訳ないけれど、なるべく早く、構造検査業者をここに寄越してくれませんか?」 彼の返事はいまひとつ冴えない。私は携帯をネジャットに渡して、直接事情を説明してもらうことにした。 と、そこへ、設計担当の青年タイフンが現れた。 私は、構造検査業者をどうやって呼ぶのか、今から呼ぶことができるのか、同じことを彼にも相談した。 すると、時々来てチェックしてるよ、と言うではないか。 「赤いジャンパーで・・・見たことないんですか? あ、ほら、やって来た」 階段から姿を見せたのは、タイフン青年が説明したとおり、赤いジャンパーを着たヒゲ面の青年だった。 私は狐につままれたような気分だった。 知らないよ~、こんな人。今まで会ったことない。 「すみませんけど、あなたを呼んだのは誰?オズギュルさん?」 「アフメットさん(夫。もちろん仮名)ですよ」 ??ええっ~?全然聞いてないよ~。 「ええっと、誰があなたを夫に紹介したんです?」 「アフメットさんが、僕を呼んだんですよ」 ??ええっ?本当なの~?それ。夫がなんで知ってるの? とにかく、電話を終えたネジャットに、さっそく彼を紹介する。 ネジャットはすぐに、私に見せた箇所について、彼に問い質す。 そこで、専門家同士の喧々諤々の口論が始まった。 そのうち今度は親方が登場し、ネジャットと親方との間でも熱い口論になる。 コンクリート業者は、いつまで待たせるんだ、ここで1時間も待ってるんだぞと息巻く。 やがてそこへ、建築家も登場。さっきオズギュルに電話して、いろいろ問い詰めたことを聞きつけたのだろう。いつになく憤慨した様子。 「オズギュルには何の関係もない。彼はうちの社員だよ。 彼に働いて欲しかったら、別に料金を払ってもらわないと。 大体あの男(夫のことを指している)は・・・・」 私は、妻である私の目の前で、また本人の居ない時に掌を返したように夫の悪口を言う建築家が信じられなかった。 大体、プロジェを作ってしまった後は、私たちの相談にもあまり乗ってくれなくなり、相談すれば高くつくよ、などと言うようになったくせに、 「質問してくれれば何でも教えてやるのに・・・ 誰それも紹介してやったのに・・・」 などと、恩着せがましいことを言うのが許せなかった。 私は、彼にわざと聞こえるようにつぶやいた。 「皆が皆、自分の正当性ばかり主張する・・・」 建築家は、「何だって?」と、険しい顔で振り向く。 私はそれには答えず、熱戦の場を離れ、足場の一番端まで退いてグレープフルーツの樹を見下ろすようにうつむいた。 建築家が言いたいことを言って姿を消すと、私の目には自然に涙が溢れてきた。 「私たち、一体ここで何をやってるんだろう・・・・」 「誰を信用すればいいんだろう・・・・」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005/03/31 01:22:15 AM
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