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南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

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2005/10/19
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ラマザン開始以来、ろくろく昼食もとれなくなり、近頃空腹にも慣れてきた私だったが、断食を一切しない夫が帰ってきたことで、今日は堂々と昼食休憩に出掛けることに相成った。

で、足は自然に行きつけのレストランのひとつ『HASANAGA(ハサンアー)』へ。
夜はまだ行ったことないので様子は分からないが、昼間は5YTL(約430円)という2種類の日替わりセットメニューのあるせいか、社員食堂のように賑わっていて、近くの会社員などが昼食をとりによく来ている。
水やチャイは食事の人にはサービスになるので、ひとり5YTLポッキリ。日替わりなので当たり外れはあるが、味もそこそこで、何より塩分控えめなのが気に入って、ラマザン前までは私たちもよくここで昼食をとっていたのだ。

ラマザン中だからどうかなあ~?とかすかに心配しつつ中に入る。
入り口を入ってすぐの位置に、以前はなかった冷蔵ケースが置かれていて、中に何種類かのメゼ(冷菜)や下ごしらえの済んだハムスィ(カタクチイワシ)が並べられている。その隣には、氷を敷き詰めた冷蔵ケースの中に魚。
へえ~、ちょっと変えたね~と思いつつ奥にある庭まで進むと、さすがにかなり空いていた。先客は外国人のカップルと、トルコ人の女性客ふたりの二組だけ。

私たちが席に着くか着かないかのうちにやってきたガルソンに今日のメニューを尋ねると、「(日替わり)メニューはない」とのこと。へえ?ラマザンに入って、メニュー構成を変えたのかな?
まもなく奥から顔を出した男性が、「変わったんですよ。つい1週間前にここを買ったばかりでしてね」と言う。
「へえ~っ。変わったんですか!?」私たちは少々驚いた。ラマザン中に経営が悪化してつぶれるレストランがあることは聞いていたが、ラマザンはようやく2週目が終わったところ。もしかしたら、ラマザン開始以前から売却の予定はあったのかもしれない。HASANAGAの名前も家具・食器・カセットテープに至るまでそっくりそのまま、オーナーと従業員、メニューだけが変わったわけである。

しかし私は、オーナーが変わったことなんかより、実は後ろのテーブルの上が先程から気になって仕方なかったのである。
テーブルの上に新聞紙が敷かれ、その上に、今まで見たこともない緑鮮やかな野菜が載っていたのである。


サカルジャ


これ、何だろう?
小さいラッキョウみたいだけど、ネギかニンニクの一種だろうか?
思わず手にとって、鼻先に近づけてみる。臭いはほとんどない。
先程のオーナーが通りかかったので名前を訊いてみると、「サカリヤ」だという。
サカリヤ?地名じゃあるまいし、念のため、まだコピー状態のメニュー・リストで確かめると、「SAKARCA(サカルジャ)」という文字が見つかった。
「どこから来るんですか?」と訊ねると、「黒海から」という。トラブゾンにいるオーナーの知り合いに送ってもらっているのだという。

さては、オーナーは黒海出身?すると、ひょっとして黒海料理が食べられる?
私は少々ワクワクしてきた。
アンタルヤでは黒海料理のレストランなんて、ほとんど聞いたことがなかったのである。

今日のメインは、この目の前にあるサカルジャより他にない!
胃が小さくなって小食になってしまている私は、とにかくこれを味見したいので、後は熱いチョルバ(スープ)かなにかで済ませることにした。
今日のチョルバは何かと聞くと、「カララハナ・チョルバスKaralahana Corbasi=カララハナのスープ)」という。

カララハナ(Karalahana)は黒海地方でよく食べられる野菜で、直訳すれば「黒キャベツ」。といっても色は黒くはなく、黄みがかかった濃い緑色をしてる。キャベツの一種というが、見かけはパンジャル(サトウダイコンの葉)によく似ている。
英語ではcollardsとかcollard greenとかいうそうだが、日本語でなんというのかは不明。
(※遊びで翻訳かけてみたら、なんと「はっぱ」と出た!爆笑)
カララハナを用いた料理の代表が、「カララハナ・サルマスKaralahana Sarmasi=カララハナのサルマ)で、普通のキャベツの代わりに、カララハナをもちいて作るサルマ(中に米や挽肉の詰め物をして煮た料理)である。
アクが強くて苦味があるので、下茹でしてアク抜きをしてから使うが、日本の野菜に例えれば、柔らかく煮た小松菜のような味・・・というところだろうか。

カララハナ・サルマスは何度か作ったことはあったが、チョルバは名前を聞くのも実は初めて。一も二もなく、そのチョルバを注文。
オーナーが、「カララハナ・サルマスも少しお持ちしましょうか?」という。それも、もちろんいただこう。
そして後は、あのサカルジャだ!卵と一緒に焼くと美味しいのだという。
夫はその他に、今が旬のルフェル(アジ科の魚)を頼んだ。(←昼間からちょっと頼みすぎ)

やがてカララハナ・チョルバスが、軽くトーストしたパンと一緒に運ばれてきた。
野菜がたっぷりで、栄養ありそう。熱々のところを一匙、ふた匙・・・。
素朴な家庭の実だくさんスープという感じで美味しい。中にクルファスリエ(白インゲン豆)や赤唐辛子、後はなんだろうか・・・トロッととろみがつけてあり辛みもあるので、これからの寒い季節にはピッタリのスープである。
(※後で調べたところ、粗挽きトウモロコシやトウモロコシ粉を入れるのだそうだ)

スープをいただいていると、カララハナ・サルマスと一緒に、今度は黄色いパンが登場した。
北イタリアでよく食べられているポレンタ(トウモロコシ粉を練り上げた付け合わせ料理)を焼いたものによく似た感じだが、聞けばムスル・エキメイMisir Ekmegi=トウモロコシ・パン)だという。どうりで似ているわけである。
黒海地方ではトウモロコシ粉が小麦粉のようによく使われると聞く。有名なハムスィ料理にも、小麦粉ではなく一般にトウモロコシ粉が使われるらしい。
ムスル・エキメイは、少々ボソボソして、スープや汁に浸して食べないと喉が詰まりそうだったが、なにしろ珍しいので頑張っていただいた。
カララハナ・サルマスも、スープたっぷりの家庭的な優しい味で「ほっ」。

カララハナ・サルマス&ムスル・エキメイ
左奥:カララハナ・サルマス、手前:ムスル・エキメイ
パンがピンボケ!


そして、味見を楽しみにしていたサカルジャが、卵と一緒に焼かれて登場。
これは、あとで調べたところではサカルジャ・カイガナス(Sakarca Kayganasi)と呼ぶ料理らしいが、カイガナ(Kaygana)とは、要はオムレツのことである。
さっそく口に運んでみる。子玉葱のようにツルリとした感触。葱ほどの辛みも臭みもない。
夫も私もこれは結構気に入り、チョルバは重くて残り半分夫にあげてしまった私も、夫と譲り合いながら、きれいに平らげた。

カララハナ・チョルバス サカルジャ・カイガナス
左:カララハナ・チョルバス、右:サカルジャ・カイガナス
いずれもピンボケで残念!


こうして、新しい食の体験という興奮もあって、量は少ないながら久し振りに満ち足りた昼食のひとときを過ごした私であった。
値段は決して安くはない(料理によっては、結構お高い!)が、ぜひ再び足を運びたいと思いながら、レストランを後にした。
今度は、ハムスィ料理を食べてみたいから。特に、ハムスィリ・ピラウ(カタクチイワシのピラフ)は、以前トゥルシュジュ(漬物屋)で一度だけ食べたことがあるが、日本人の私にはしっくりくるお味だった。

アンタルヤにお住まいの方々。もし黒海料理を試されたかったら、今がチャンス!
だって・・・・ラマザン中にオープンしちゃって、ひょっとしたらあっという間につぶれて他の人に売ってしまうということも十分あり得るからネ。(←大変失礼しましたm(_ _)m)






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最終更新日  2005/10/20 07:11:09 AM
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