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テーマ:海外での「家」作り(67)
カテゴリ:トルコで建物づくり
(4)排水管不通・水漏れ問題(続) 翌朝は、現場に着くなり、バスルームの掃除にとりかかった。 便器やシャワー等を取り付ける際に出た塵やビニールゴミ、パーツの残りなどを、今のうちに集めて捨てておかなければ、またいつ排水管が詰まる原因となるか分からない。 各バスルームを順々に回り、箒で塵・ゴミを集め捨てる。次に雑巾で床を拭く。 と・・・・床の片隅に開けてある排水孔の口がタイル用接着剤で完全に塞がれているのが目に入った。おまけに、洗面台の下の排水管には、まだ紙が詰まったままになっている。 大きな声で夫を呼ぶ。「排水管も全部チェックしてって言ったのに、チェックしなかったの?ほら、見てよ。ここは完全に塞がれちゃってるし、こっちは紙が詰まったまま。てことは、排水のチェックをしてないってことでしょ?」 前日、帰ってきた夫は「全部チェックした」と言ったはず。それなのに夫は「俺が分かるわけないだろう~!」と怒り出した。「俺はそういうセンスがないんだよ」だなんて、どういう言い訳だろうか? 私が立ち会えない代わりに、「全部チェックさせてね」と繰り返しお願いして帰ったのだ。「センス云々の問題じゃあないのよ。私の言ったことをしてくれてないってことが問題でしょ!?」私の語気もついつい強くなる。 夫は半ばヤケになって、そこにしゃがみこみ、ドライバーの先端などを使って接着剤を削り始めた。ホースを階下から引っ張り、排水孔の中にホースの先端を突っ込み、水を流す。排水孔は、やはり接着材だの何だので随分と塞がれてしまっていた。 私は夫に、洗面台の下の排水管も見てね、と言い残して、他のバスルームの掃除に戻っていった。 が、いつのまにかその作業に没頭しはじめた夫は、私の言ったこともまるきり忘れてしまったようだった。 しばらくして、夫の様子を見に行く。ホースの水をシャワー内に流しっぱなしにしているのが目に留まる。 「ねえ。どうせ流すなら、こっち(洗面台の方)に流した方がいいんじゃない?そっち(排水孔)を掃除している間に、同時にチェックできるでしょ?」 そう言うか言い終わらぬうちに、私はピンときた。 「ねえ?ひょっとして、こっち(洗面台)の方は、チェックしてないとか?ねえ?そうなの?」 そう問い詰めたので、夫もキレた。「やりたきゃ、自分でやればいいだろう!」 私も頭にきて食いさがる。「やるなら同時にやらないでどうするの!いちいちホースを引っ張って、また最初の部屋から順番にやるなんて、時間の無駄でしょう!? とにかく、私は拭き掃除が残ってるから、ババ(パパ)がやってちょうだい」 そう言い放つと、その場を離れた。 結局夫は、ホースを持ってしぶしぶ全部の部屋を回り、床の排水孔と洗面台の排水管の2箇所をくまなくチェックしたようだった。 私はそれを終えると、娘たちの迎えのために一足先に帰ったのだが、夕方、現場から厳しい顔をしながら戻った夫は、開口一番こう言った。 「大変だよ。また工事だ」 私は、ドキッとして「何があったの?」と訊く。 なんと、本日の床の排水孔と洗面台の排水管の排水チェックの結果、1階の天井、美しいカマボコ型のアーチを描くような形で特注した吊天井と、キッチンの吊天井の両方に、大きな水漏れのしみができているという。 つまり、少なくともふたつのバスルームの排水管の水漏れが決定的となったのである。 もちろん、吊天井をいったん壊さない限り、排水管の修理・交換は不可能。(涙) 結局、ギャラリーの天井も含め、合計3箇所の吊天井の修理が必要になりそう・・・。(涙) でも、全面交換ではないのが、まだ救いである。吊天井はパネル状の石膏ボードを張り合わせて作るので、必要な箇所だけ壊して、パネル交換すればいい。 しかし・・・私たちはその翌日である昨日、もっと不吉な情報を得ることになった。 建具の再塗装を手掛けている塗装職人たちの親方が、バイラム前の最終日のためかどうか、作業開始後初めて現場に顔を見せた。 私たちは彼、イブラヒム親方のことを、塗装全般に関する知識はもちろん、建築全般に関する知識も相当ある、かなりのウスタ(師匠、腕のある職人)と認めている。 イブラヒム親方は、排水管の水漏れを訴える私たちの話を聞いて、きっぱりと助言した。 いわく、排水管の通る天井に使う石膏ボードは、耐水性のある緑色石膏ボード(yesil alcipan)でなければいけないと。 「なぜ、白色石膏ボード(beyaz alcipan)になんかにしたんだね?」 そう問い詰められても、私たちには答えようがない。吊天井業者と、その当時現場監督を務めてくれていた夫の従兄弟ネジャットが相談して決めたことなのだ。常時湿気にさらされるバスルームだけは、緑色石膏ボード。それ以外はすべて白色石膏ボードにしてあるのである。 親方はさらに、排水管は全て防水シートを巻いた方がいいと教えてくれた。 しかし・・・・最も安全な方法であることは分かるが、親方の言う通りにするとすれば、吊天井も排水管も、前面交換しなければいけない羽目になる。(涙) 水漏れ問題は、こうして吊天井交換問題にまで繋がっていくのであった・・・・。 **** この頃、なぜにここまで運の悪い事態が重なってくるんだろう。 夫が、何かに思い当たったように呻いた。 「このウールスズルック(縁起の悪さ、悪運)は、考えてみたら隣からコンクリート業者を紹介してもらった時から始まってるような気がするよ」 そういえば、コンクリート業者だけでなく、水道設備のアフメットも、タイル職人のシナンも、性質の悪い業者や職人たちの多くは、みんな隣のギュルスン夫人のところから流れてきたのだ。 「もしかして・・・これってナザル(災い)なの?ギュルスン夫人の・・・。 うちが羨ましくて仕方ないから・・・?」 ナザルだとは認めたくない気持ちの一方で、ギュルスン夫人の「思い」の強さには常々空恐ろしいものを感じているのも確か。 いまだに、「間の壁にドアでもつけて、互いに行き来できるようにしましょうよ~」と、しつこく繰り返すほどに、遺跡も見え緑の多い我が家の庭が気に入っているのだった。 「それしかないよ。だって、彼女。本当はうちの土地を買いたくて仕方なかったって、自分で言ってたもん」 夫の言葉を聞きながら、私たちはナザル・ボンジュウを掲げるのが遅すぎたかもしれないと、本気で思うのだった・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005/11/04 07:35:20 AM
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