私たちは身体を持っています。
その身体を使って何かをすることで、はじめて自分となりえる。
人の行動には、内部環境である身体が関係し、外部環境である様
々なモノや事が更に影響を与えます。
このようにスナイダーが感じた"いまここ"とは、私たちが自分を見
る瞬間の時と場所だといいます。
彼が"いまここ"に注目する拠り所は何か？
スナイダーがここまで"いまここ"にこだわるのは、一つは彼の、
一神教的西洋文明・思想への批判精神が背景にあるらしい。
彼はエッセイ『 Practice of the Wild 』において、西洋文明が一神
教にこだわった排他的文明だと切り捨てています。
西洋文明の歴史が、人間とその他の自然を分けてしまい、自然を
一方的に搾取してきたのだと批判しているのです。
このような西洋文明に代わるものとして、森羅万象的な東洋思想
を活用できないか？
エッセイ『 Earth House Hold 』では、「あるがままの有りようをみる」
という古代日本人に見習って、"いまここ"の議論に一つの示唆
を与えています。
また、『 Mountains and Rivers without End 』に収められた
‘With This Flesh'の詩の冒頭では、今度は華厳経の一節を引
いたり、意識や知覚される全ては"悟りの根"、仏陀を"花や実"
であるとする華厳経を"いまここ"を彼自身の身体の拠り所とし
ていると書いているそうです。
参考； 『「無の場所」から読み解く賢治とスナイダー』
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