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体重は2800。 やっと生まれた時よりも少し増えた。 今まで浮腫みの分の体重増加の方が多かったのに比べ、 この時は純粋に体重がほんの少し増えて、 体力がこのままつけば…と期待が膨らんだ。 35~40mlと増えたり減ったりする1度に飲める量のミルクが 1日に8回。 一生懸命頑張って消化する量が300mlを行ったり来たり。 料理に使うカップが1つとちょっと。 そう考えると切なくなった。 本当はこの量の2倍は飲んで欲しいんだけどなぁ と先生も擢斗を見てつぶやく。 2~300ってこんなに多かったんだ。 たかだか大きめのコップ一杯の量に 顔を真っ赤にして頑張る小さな身体。 口から飲めないミルクはあの子にとって ただお腹が膨れて、 調子が良い時は眠くなり、 悪い時には苦しくなる。 それだけのものだったと思う。 鼻に通したチューブが胃につながる。 ミルクが通ると、チューブが肌色になった。 もしかしたら『飲む』という表現自体、 間違いだったのかもしれない。 体力をつける為、生きる為に体にいつの間にか流れてくる栄養源。 決まった時間が近づけば何となく空腹を感じ、 目を開け、口をパクパクさせて訴える。 その動作が最初は本当に嬉しかった筈なのに、 しばらくすると味わえないんだなという 寂しさに変わっていて自分で驚いた。 欲張りなのは重々理解していた。 もっともっと最初は ミルクさえ飲めずに、栄養だけを点滴していた。 ミルクを始めますよと言われた時には 本当に嬉しかった。 それでも、 目の前の何よりも大切なわが子に知って欲しい事が 私たちの胸にはいつも溢れていて、 いつでも欲張りだった。 結局美味しいものを食べてお腹がいっぱいになる感覚は 最後まで味あわせてあげられなかった。 この時よりももっとずっと後。 もっともっと元気になった時に、スポイトで数滴、 擢斗は口からミルクを味わった時があった。 呼吸器が口から首に移動し、 笑うのも、遊ぶのもだいぶ自由になった頃。 初めて舌に感じる味に 大きな目を更に大きくして、 小さな口を動かしもっとくれと涙を流した。 スポイトでたった一滴。 喉に通した呼吸器で声は聞こえない。 それでも声が聞こえそうな位 顔をくちゃくちゃにして大きく口を開けて、 精一杯の主張を見せた。 呼吸器がなかったら、もう、普通の元気な赤ちゃんのようだった。 もう一滴。 その大きな口に落とすと あっと言う間に真っ赤な目をクリクリさせて 口をモグモグさせた。 『ごめんね擢ちゃん。もうおしまいだよ。』 困った顔をして看護師さんがミルクとスポイトを 持っていなくなった後、 泣き続ける擢斗のサラサラした髪の毛を沢山撫でた。 元気になったらいっぱい美味しいもの食べようね。 あの時の顔が今も忘れられない。 クリックよろしくお願い致します お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.11.25 11:42:45
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