語りと筆しごと～書家香玉のうずまき帖

引っ越しを３日後に控え、落ち着かない日々。
一番気がかりなのが、冷蔵庫の中身だ。
引っ越しの日までに、空にしないといけないのだが
使い残しのソース類や、半分ほど残っている瓶詰めの佃煮
漬け物などは、どうしよう。
野菜室もまだいろいろと。冷凍庫の中も賑わっている。
うまく使い切る計算だったのだが、荷造りに疲れ
ついつい外食が多くなったりして…
さっぱり料理をする気にならない。
まぁいいか。
余った食品は、クール宅急便で新居に送ればいいか。


ためいきまじりでキッチンに立つ。
果物かごにしなびたリンゴが１つ。
たしか２週間くらい前にスーパーで３個５８０円で
買った、サンつがるだ。
２個はすぐに食べたのが、１つだけ食べそびれ
そのままになっていた。
捨ててしまおうかと思ったが、なんだか可哀想になり
私の唯一のおやつレシピ、コンポートにしようと思い立つ。


たった１個のリンゴで作るのは初めて。
丁寧に皮をむく。
思ったよりもまだ身がしっかりしていてみずみずしかった。

リンゴのコンポートは
昔、由布院のとある喫茶店で初めて食べて以来
すっかりファンになり、のちにその時の味を
自分の舌だけを頼りに適当に作ってみたところ
なかなかいい感じにできあがったことから
勝手に、自分の得意スィーツとしているものである。

作り方はいたって簡単なのだが、日頃
そういう食べ方をする人は少ないみたいで
毎年、りんごのおいしい季節に友人たちに
得意気にふるまうと、決まってみんな
おいしいおいしい。ぜひ作り方を教えてと
喜んでくれる。

しかし、大雑把な私は、きちんと計量して
作ったためしがない。
さとうをばぁ～っと、とか赤ワインを適当になどとしか
言いようがないのだが、それでも毎回必ず
おいしくできる。

りんごと砂糖と少しのバターと、レモン汁。
それに安物の赤ワインがあればぜひ。
きっと誰が作っても、材料さえ揃っていれば
絶対においしくできる、うれしいおやつなのである。

今回も、大成功。
慌ただしい時間、雑然とした部屋に漂う
甘い香りに酔いしれる。
ルビー色に染まったリンゴのかわいいこと。
甘酸っぱくて、ほんとうにおいしくて
幸せな気分となる。

以前の日記参照→りんごが美味しい季節