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2006.09.04
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カテゴリ:かみさまと私
夏のおわりというか、秋風のふきはじめる頃というか、とにかくこの9月の初めというのは、私にとって大切な思い出のある季節だ。

私の行った大学では、2年目の夏休みあけ、医学歯学コースを含むすべての生物学系学生に必修の1泊2日の臨海実習というのがあった。毎年500人以上の学生の実習を担当した教官は、さぞかし大変だったことだろう。それでも、この実習はそれだけの値打ちがあったと思う。

何をしたかというと、ウニの初期発生観察。この時期は、バフンウニの産卵シーズンなのである。もちろんウニを勝手に捕獲することはできず、最寄りの漁協から購入したウニを実習に使うのだが。

実験室で、水槽から取り出したウニを薬品処理してメスであれば放卵、オスであれば放精をそれぞれ誘導する。そして、卵と精子を海水中で混ぜ、顕微鏡で観察し続ける。もうずいぶん昔のことなので、少し記憶があやしくなっているが、受精から最初の細胞分裂までは、1時間くらいだったろうか?1つの細胞が2つ、4つ、8つ、16になっていくのを私たちは観察した。昼すぎにはじめて、細胞が16になったのを見届けると、夕食だった。夕食のあと、ちょっとビールなど飲んでもよい時間があって、就寝まえに、もう一度顕微鏡をのぞくと、卵はもう数えきれない細胞の集団になっていて(それを胚とよぶ)、胚が卵のからをやぶって泳ぎだすのだ。この胚は卵の殻からでても小さなガラス皿のなかだけど、自然界では大きな大きな海に泳ぎだすわけだ。いったい無数の胚のいくつが生き延びるのだろう?とにかく、私はこのウニの赤ちゃんを応援したくなったものだ。

一夜あけると、ウニの赤ちゃんは変態していた。前夜までは丸い細胞のかたまりたったのが、ユリの花のような、見る角度によっては星のような、「プルテウス」とよばれる幼生になってガラス皿のなかを泳ぎ回っていた。もちろん私たちはこうなることを教科書で知っていたのだが、実際に目にすると、感動があった。このプルテウスがさらに形をかえ、将来あのクリのイガのようなウニになる。

昼ちかく、臨海実習所を去る時間がせまり、私たちは実験室を片付けていた。最後にもう一度顕微鏡をのぞき、ウニの赤ちゃんを見た。私の実習パートナーだった男子学生が言った。「こんなちっぽけなウニでも、一日つきあうと、情がわくなぁ、かわいいよなぁ」私もそう思った。ただ見ているだけだったのに、情がわき、無事育ってくれと願わずにはいられなくなっている自分に気づいた。そして、私でさえそうなのだから、ただ見ているだけでさえそうなのだから、まして、わたしたちを造ったかたであれば、無条件の愛を私たちに注いでくださるにちがいない、と確信した。





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最終更新日  2006.09.05 00:40:33
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