「真実を話す義務がある」
NHK番組改編問題でNHKを内部告発した長井暁チーフプロデューサーの記者会見での言葉だ。真実を語る決意をした心境を涙ながらに語った彼の勇気に感動した。あの官僚的なNHKからこのような人が出てきたのは奇跡に値する。彼は日本のジャーナリズムを守るために戦う救世主であり、その勇気を決して無駄にしてはいけない。そのためにも、僕は徹底的にこの問題の本質を考えてみたいと思います。
■ NHK番組の改編現場で何が起こっていたのか?
念のため番組改編の裏側で何が起こっていたかご存じない方のために、番組改編から朝日新聞報道までの内容を下記にまとめます。(長井さんの記者会見はVideonews.comで長井さんの記者会見 を無料で観れます。ちなにみ長井さんが心境を熱く語ったのは47分前後でした)
- 1月下旬国会担当の野島担当局長が安倍、中川議員から呼びつけられ放送中止を求められる。
- 放送前日の1月29日に松尾放送局長、野島担当局長が安倍、中川議員を訪ね番組放送に理解を求める。
- しかし、了解を得られず午後6時、2人は伊藤番組制作局長と編集済み番組の試写を行い、改変を指示。44分の番組は43分に削られる。番組放送前に局長級が試写を行うのは異例のこと。
- 放送当日、松尾放送総局長は、さらに(1)中国人被害者 (2)東ティモールの被害者 (3)従軍の加害者のインタビューの3分カットを業務命令。この3分カットは現場全員が松尾放送総局長に反対をしたが、結局業務命令で改変された。
- 2001年1月30日 問題の番組「問われる戦時性暴力」を放送
- 2004年9月にNHKコンプライアンス推進室が設立。NHK不祥事もあり、内部告発を促進する制度を作った。
- 長井さんは12月9日にNHKコンプライアンス推進室に内部通報した。
- 12月下旬に朝日新聞と接触があったが、コンプライアンスの調査結果を待ちたいので記事にしないように依頼。
- しかし、1ヶ月たっても関係者(松尾、野島、伊藤)へのヒヤリングすら行われていない事実を知り、真実を語る決心。朝日新聞に記事にしてもいいと了承した。
■ NHK番組問題の本質とは?
安倍・中川議員は「自らNHKを呼び出していない」、「番組の内容に偏りがあった」などと問題をそらすよう勤めている。それをまにうけ、「番組の内容が偏向していたかどうか」などと見当違いな思い込みをしている人は多いのではないか。従軍慰安婦の問題はナーバスな問題なので、番組内容について議論すると問題の本質を見失ってしまう。
偏った報道もありあえることを前提に報道の自由が守られている。何をもって「公正・中立」をいうのか、それは視聴者が判断するべきことであって、政治家が判断することではない。
では問題の本質は何だったのか?
- 政治的圧力により番組内容を変更したこと
安倍は朝日新聞への反論で、「放映されていない内容を関係者から聞き、明確に偏った内容であることが分かり、NHKに求められている公理・校正・中立の立場で報道すべきでないと指摘した」とコメントしている。国会議員たるものが、報道者に対して放送前の番組内容についてアドバイスしたことは、明らかに政治圧力で番組改編が行われたといえる。言論の自由を尊重し自分の発言に気をつけなければいけない立場の安倍が、「私は違法行為をしました」と堂々とコメントするアホさかげんに驚かされる。
- 自民党のケツなめ放送局NHK
NHKは国民から義務的(税金的)に受信料を請求するのに、NHKの予算編成は国会の承認がいる。そのため国民のためではなく、どうしても与党議員に偏った報道となってしまう。
その政治的役割のトップが海老沢元会長となり、今回のように番組企画が変更されたり、番組放送が中止されたりすることが日常茶飯事に行われ、政治に関しては口をださない腐った組織を作ってしまった。NHKは事前に政治家に番組を見せるのは当然だと堂々と言い切ってしまうところに、報道機関として麻痺している。自分の発言をする前に政治家の意見を伺うなど、報道する立場として死を意味する。
NHKが「公理・公正・中立」と言われているが、こんなのはウソ。本質は自民党議員のケツなめ経営者によって運営されている偏った報道機関といえる。海老沢がいなくなっただけでは、根本的な解決にはならない。予算編成は国会がきめるにしても、報道に関して介入できないシステムが必要と思われる。
最近NHK受信料の支払いを拒否するひとが増えているが、ただ拒否するだけでなく本質的な問題を忘れてはいけない。政治介入による番組改編や放送中止により政治家の意図する情報だけを流しては、国民の利益にはならない。
政治家は
「何も考えるな」
「愛国心たれ」
「言われたとおりにせよ」
と言っているようなものだ。
自民党ケツなめ放送局NHKと安倍・中川のアホに対して国民は怒らなければいけないのに、相変わらず無関心さが漂っているようにおもえる。政治家、メディアに操作された日本でいいのか?そのまま何も考えなくていいのか?
批判なくして、物事に改善はない。内部告発した長井さんの勇気ある決断を無駄にしてはいけない。今こそメディアの問題意識を持ち、ひとりひとりが考えなければいけないと思う。