今の時期の多く出回っている蘭といえば、シンビジュームやデンドロビュームである
シンビジュームが市場に多く出回り始めた今月初旬に、目玉商品としてお買い得な価格で売って、なかなかの好評を得て完売した
それから日を置かずして一人の年配のご婦人が来店された
なんでも、シンビジュームの特売をしていたことは知っていたのだが、用事があって買いそびれてしまったので、セール価格でシンビジュームを売ってほしいというものだった
はぁ!?
数量限定でご提供した商品を、自分の都合で買えなかったから同じ価格で提供しろとは甚だしい話である
その旨を伝えて丁重にお断りしたのだが、ご婦人は納得されないような表情を浮かべて帰っていかれた
しかし、その後も何回か顔を覗かせては『安くシンビジュームを売ってほしい』としつこく強請られた
接客商売ではあるまじき行為ではあるが、そのお客様を接客するのは少々億劫に感じていた
そのご婦人ときたら花は買わずに、ただ“シンビジュームを安く売れ”の一点張りだから、こちらとしても、そんな身勝手で理不尽な話はお断りするしかない
そして先日、また懲りずにシンビジュームを欲しがるご婦人が来店された
今度は男性を伴っている
どうやら、2人は夫婦のようである
その男性は『妻がシンビジュームの鉢を買いたいといっているのだが、ありますか?』
と言うので、返ってくる答えが半ば判りつつも『ご予算は?』と尋ねると、案の定特売の時の価格が返ってきた
夫婦共々しつこい!!
その値段は特売の価格なので通常ではお売りできないと説明しても、『あの時はあの値段で売っていたでしょう?』と埒があかない
もうここまでしつこいとなると、哀れとしかいいようがない
正月の準備やらで忙しく、無駄話に付き合ってはいられないので、ついには自分が根負けした形となり、市場で出回っていたら入荷しますと、しぶしぶ承諾した
するとあろう事か、ご婦人は
『選びたいから何種類かお願いしますね』と言ってのけた
その一言に、それまで理性を保っていた自分の表情が若干歪んだ
が、そこは接客商売、どんな理不尽な客でもお客様には変わりはないので、冷静につとめた
客は店側を選べるが、店は客を選べないのである
接客をしていると様々なお客様がお見えになるが、久々に花を売りたくないお客様に遭遇した
生産農家が丹精込めて出荷した花を値切り倒すだなんて、甚だしいにも程がある
願わくば、ご婦人とは今回限りの縁であってほしい
今日市場に出向き、探しに探して安く仕入れてきたシンビジュームを、苦々しく見つめて心底そう思った…
【シンビジュームの花言葉】
飾らない心