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あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

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2009年03月07日
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カテゴリ:
契り
自分のことを慕ってくれている年下の子から、
「彼女が妊娠したんです」
と、報告を受けた
自分は素直に、祝福の言葉を述べた
しかし彼は、
「でも堕ろさせます」
と、顔色一つ変えることなく、まるで他人事のように言った

訳を聞くと、まだ遊び足りないから子供は要らないのだという
子供の為に人生を費やすのではなく、今は自分の自由に生きたいというのだ
彼は二十代半ばと、まだ若いから、その気持ちが解らない訳でもないが、それよりも、自分の子供を授かったという喜びのほうが遥かに喜ばしい事だと自分は思うのだが、彼の場合はそうでもないようだった
何故ならば、子供を堕ろさせるのは、これで3度目だというのだ
しかも相手は同じ女性だと言う
だから、中絶させることに対して、特別な感情は無いのだと彼はキッパリと言った
それを聞いて、自分は思わず閉口してしまった…

己の欲の為に行為を重ね、その結果授かった命を、邪魔だからという理由だけで葬り去ってしまう
こんな我が儘な行為が許されるのだろうか?
話を聞いていて、嫌悪感からくる激しい吐き気を自分は覚えた

彼とこの話題を続けること自体苦痛だったが、この事実をみすみす見逃すことも嫌だったので、話を続けた
二度も中絶をした彼女は、今回のことについてどう思っているのか訊ねると、「産みたい」と言っているそう
そりゃそうだよ
愛する人の子供を産みたいと思うのは、女性なら普通の考えに決まってる
それにしても、このカップルは、ある意味どっちもどっちだね
「子供は要らない」と言っている男なんだから、また妊娠をしたら同じ答えが返ってくるに決まっている筈
それなのに、また同じ悲劇が繰り返されようとしている
いくらでも避妊する方法はある筈なのに、なぜ同じ過ちを繰り返すのだろうか?
これは、二人だけの問題なんかじゃない
命から命へと受け継がれていく生命の連鎖、そして、新しく誕生した生命をも冒涜しているのだ

結局のところ、彼は、このような話題を自分に切り出してきて、どうしたかったのだろう
自分の行為を正当化したかったのだろうか?
彼は彼なりに思い悩んでいて、その胸の内の苦しみを聞いて欲しかったのだろうか?
子供がいるわけでもなく、結婚もしていない自分が、愛や生命の尊さを聞かせたところで、彼の胸にどれだけ響いているか知る由もないが、自分の思いはストレートにぶつけた

彼女は今、妊娠6週目だという
まだ答えを焦って出す必要はない
話を終えた彼は、
「もう少しじっくりと考えてみます」
とだけ言った
中絶するか産むか、答えを出すのは結局は2人が決めること
どのような結果になろうとも、これ以上は自分が口出しすべきではない
それが彼らの愛の形なのだから







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最終更新日  2009年03月11日 08時28分25秒
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