あぁ…
なんて美しいモンブランなんだろう
ケーキに「美しい」と言う言葉を使うのはおかしい?
けれども、ほんと美しいんだよ
芸術品だね
そのモンブランは、ショーケースのなかから、ボクを誘惑してきたんだ
「食べて…」って
ケーキが喋るはずもないけど、明らかに誘いをかけてきた
ボクはあっさりその誘惑に負けた
ケーキは見た目もご馳走
眺めているだけで心が弾む
フォークを入れるのを躊躇うほどの美しいモンブラン
それでも最終的には、崩して自分のくちのなかへ
ほどよい甘さのクリームと、砕かれたマロングラッセが舌にからみつく
幸せのひととき…
けれども、その夢も長くは続かない
あっと言う間に現実に引き戻された
そこに残されていたものは、モンブランの余韻が残した幸せと、
ダイエット中と言いつつ、またもや甘い誘惑に負けたことに対する罪悪感だった