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カテゴリ:舞
歌舞伎座には、“一幕見席”というものがある
通常歌舞伎の公演は、昼の部・夜の部に分かれていて、3~4つの演目で構成されている 一幕見席というのは文字通り、そのうちの一幕だけ観られる席のこと 料金は演目により異なるが、大体1000円前後と、気軽に歌舞伎の世界を楽しむにはもってこいの席 座席数は90、立見数60、合計150名の定員制 切符は、歌舞伎座正面入口の脇にある一幕見専用窓口で販売となるが、当日売りのみで、販売開始時間は開演時間により異なる 自分は、その一幕見の切符を買い求める為に列に並んでいた 販売開始時間より早めに劇場に到着すると、まだ数人しかいなかった なので、ちょっと時間を潰して頃合いを見計らってから戻ってきたのだが、既に三十人ほどの人が並んでいた 列の最後尾につくとき、係りの人に「立ち見になりますが…」と言われたが、それでも構わないと思った どうしても観ておきたい演目だったからである いかにも歌舞伎座に通い詰めているような風貌をした男性、それから歌舞伎には縁遠いような若い女性、仕事帰りと思われるスーツ姿の男女、外国人の方など、実に多種多彩な人たちが列に並んでいる 時間になると、専用の窓口で切符を購入 1400円で2時間程歌舞伎を鑑賞できるのだから、安いものである 一幕見の客は、4階席まで直接通ずる階段をあがっていく 通常の入口とは異なる専用の階段なので、歌舞伎座のロビーや売店などは利用することができない ある意味、隔離されているといっても等しい 雰囲気ある歌舞伎座の内装を見ながら、4階席に到着 丁度休憩中ということもあって、劇場内は賑々しい状態にあった 一幕見席は完全入替制ではあるが、引き続き次の幕を観る場合にはそちらの観客が優先される なので、最後の演目から一幕見する場合は、大抵立ち見になってしまうようだ 今日は自分を含め、30人ほどの人が立ち見となっていた 席は4階席 天上がすぐ上にあるようなところ そこから眺める舞台ははるか前方斜め下にあり、見下ろす感じ 歌舞伎座は、今回で2回目 これから観るのは、中村勘三郎氏主演の『籠釣瓶花街酔醒』 江戸中期の時代、江戸の吉原で実際に起きた事件を題材にしたもので、歌舞伎座でも度々上演されている演目 自分がこの作品の存在を知ったのは去年のこと 「カゴツルベ」「籠釣瓶 吉原百人斬り」という作品を観劇し、そのドラマチックな展開に釘付けになり、是非歌舞伎版も観てみたいと思っていた そんなときに、2月に公演があることを知った けれども、歌舞伎座は今年の4月をもって取り壊されるということもあり、チケットを入手するのは困難 そこで、一幕見で観ようと考えたのだった 『籠釣瓶花街酔醒』 野州佐野の絹商人・佐野次郎左衛門は、江戸吉原で道中姿の花魁・八ツ橋を見染め、通い詰めたあげく身請けしようとする ところが、八ツ橋は情夫の繁山栄之丞に責められ、満座のなかで次郎左衛門に愛想づかしをする 悲憤で故郷へと帰った次郎左衛門、数ヵ月後にふたたび吉原へ現れたその目的は… 4階席から見下ろす舞台はやはり遠い 分かっていても遠い 自分の視力では、役者の方の声を聞いて、「あの人なんだぁ…」と判別するのがやっと それに覚悟していたとはいえ、2時間近くの立ち見はやはり疲れる 役者がぼんやりとしか見えないから、作品の雰囲気、歌舞伎座の空間を楽しんだ 肝心の作品はというと、解り易い展開なので、歌舞伎に関して何の知識も無い自分が観ていても飽きることはなかった けれども、テンポがゆっくりとしているというか、間延びした印象は拭えない これが近い席での観賞なら、役者の方々の表情や所作などが分かって、また違った印象を受けるのかもしれない が、4階席で作品の雰囲気を味わっていた自分としては、どこか物足りなさを感じずにはいられなかった 気軽に、そして手軽に歌舞伎を楽しむことができる一幕見席 はじめて体験したけれど、面白かった 以前から観てみたかった演目も観ることができ、楽しいひとときを過ごしたのであった 歌舞伎座さよなら公演 二月大歌舞伎・夜の部 『籠釣瓶花街酔醒』 2月1日(月)~25日(木)まで 出演/佐野次郎左衛門…中村勘三郎/兵庫屋八ツ橋…坂東玉三郎/繁山栄之丞…片岡仁左衛門/立花屋長兵衛…片岡我當/治六…中村勘太郎/立花屋おきつ…片岡秀太郎/兵庫屋九重…中村魁春/釣鐘権八…坂東彌十郎 ほか お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年03月23日 16時49分01秒
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