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カテゴリ:哀
「許して!」
「もうしないから!」 「お願いだから、家に入れて!」 窓の外から、涙混じりの子供の絶叫がこだましている その悲痛な叫び 一体どれほど続いているだろうか 子供の泣き喚く声が、夜の静寂を切り裂いていた 子供ながらに必死になって謝り続けている声 親に許しを乞うその悲痛な叫びは、自分の心のなかを激しくかき乱していた そして、胸の奥底にしまっていた遠い記憶を呼び覚ました 自分の父親は、とにかく乱暴者だった 子供ながらにして息が詰まるような、父親の顔色を窺いながらの生活 父親から激しい暴力を受けることも度々あった その恐怖、痛みは今でも忘れることができない 今、外から聞こえる子供の泣き喚く声を耳にし、境遇に重なるところを見て、幼い頃に受けた忌まわしい記憶が蘇ってきていた 耳を覆いたくなるような涙混じりの絶叫 そこまで我が子が許せないのなら、自分が家に引き連れてしまおうか… そんな衝動に駆られるほど、子供の泣き叫ぶ声が、自分の耳にこびりついて離れない このまま聞き続けていると、気が狂いそうだ それもいつしか聞こえなくなり、夜の街はいつもの静寂に包まれていた きっと許しを得たのだろう その子が何をしたのか自分は知る由もない けれども、小さな子をそこまで追い詰める理由がどこにあるのだろう 教育の一環なのかもしれないが、それは誤っていると自分は思う このことによって残されるのは、心の傷だけ その傷は、遺恨となって長く長く心のなかに生き続ける 家を追い出され、計り知れない恐怖に怯えながら、泣いていた男の子 このことがトラウマにならなければいいけれど… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年04月12日 17時04分53秒
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