|
カテゴリ:本・読書
桐生慧海こと鈴木正彦は、ちょっとした気の迷いから堅実な職と妻を失い、その原因を作った男と共にビジネスとしての宗教団体を立ち上げる。
ネット上から始まった教団は、生き辛い若者、迫害された女性などの寄り処となりつつも、カルト化する事を丁寧に回避する教祖のバランス感覚から、やがてその勢力を拡大し始めるが・・・ *** 9・11後、多くの人が感じた宗教に対する問題意識を、最高級のミステリーとして展開して見せる手腕はさすが。 社会の様々な事象に対する実に冷静で的確な観察眼が、物語に独特のリアリティを与えます。 カリスマ性ではなく、あくまで常識的感覚と、適切な説明力で既存宗教と争わずに教祖の役割を演じる正彦と、天性の女たらしの才を発揮して女性信者をとらえる矢口。 この二人の人物設定がそのリアリティの骨格になっており、本当にうまいなぁと思います。 自らが作り上げた虚構に取り込まれ、抜き差しならない状況に追い込まれる下巻に入ってからの怖さは、文字通り鳥肌モノです。 信仰というものの本質を考えてみるきっかけに、などという事を小説を対象に述べることには慎重でありたいところですが、今のタイミングならその問題提起もありなんじゃないかと。 苦海度★★★★☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015/07/13 11:17:27 PM
コメント(0) | コメントを書く
[本・読書] カテゴリの最新記事
|