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カテゴリ:本・読書
同著者の『翼』でも似た感覚を持ったけれど、生きることとか愛することとか、そういった普段はあまり自分で問い返したりしない事について、安全な位置から引っ張り出されて不安定な状況に置かれてしまう。
「自分とは違う人種のあり得ないフィクション」と読むならそんな事にはなりはしないわけで、どこかに普遍を湛えているわけだ。 『ほかならぬ人へ』の主人公は、世間で誰でも知っている名家の三男だが、優秀で外見にも秀でた二人の兄との違いに「生まれそこなった」という感覚を持っている。 仕事のつきあいで行ったキャバクラで知り合った女性と結婚するがうまくいかず精神的にボロボロになっていくが、職場の女性上司である東海さんの優しさに救われる。 しかしその東海さんの人生もまた、壮絶で厳しいものなのだ。 「ベストの相手が見つかったときは、この人に間違いないっていう明らかな証拠があるんだ」と主人公は言う。 ベストである実感はだんだん積み重なっていく、って事もまた一つの真実であるように思うけど。 それはともかく、要するに我々はどこまでいっても無いモノねだりをやめられない生き物であるのは確かだ。 結婚式を間近に控えながら元カレとの過激なセックスに耽る主人公を描く『かけがえのない人へ』と2編収録。 第142回直木賞受賞作。 フェロモン度★★★★☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019/06/04 10:23:02 PM
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