農業が行き詰まる原因という話(その2)
さて続きです。こんなことは当たり前だと思われるかもしれませんし私自身頭を整理する為に書いているので、読まれた方は不快になるかもしれませんがご容赦を。では経営の点から農業を見てみます。原則から言ってしまいますと、1,000万円を稼ぎたければ1,000万円の、1億円を稼ぎたければ1億円の商いをしなければならないということです。つまり、最も好条件下においても1,000万円稼げないならばその仕事で1,000万円を稼ぐと考えるのは止めなければならない。農業においては、その土地からの収穫で1,000万円を稼げるかということなのです。仮に米の生産者価格が10kg3,000円ならば、それだけで1,000万円稼ぐには34トンの収穫が必要です。1ヘクタール当たりの収穫量を5トンとした場合、最低6.8ヘクタール無ければ粗売上で1,000万円にはたどり着きません(粗売上であって粗利益ではないところに注意)。ところが日本の農家の平均農地面積は1.8ヘクタールということで、この時点で既に自立して農業を行うことは不可能であることが分かるのです。仮に高付加価値化を狙ったとしても、例えば10kg3,000円という普通米に対し魚沼産コシヒカリでも10kg6,000円、ヴィトンだのグッチだののマークが付いて10倍になるような物とは高付加価値化も頭打ちになってしまいます(更に、高付加価値品を生み出すためには大変な労働リソースを投入する必要があり、また産地ブランドで額が決まってしまうというのも問題である。漁場が同じでも佐賀関に揚がるだけで高くなるのと同じ)。先に提示した第二則「ある条件下で特定産業の効率化が極値に達していた場合、産業構造全体の変化は大抵の場合、その産業の衰退を意味する」についてですが、1)ある条件下=現在の農地面積2)効率化が極値に達していた場合=機械化・兼業化3)産業構造全体の変化=経済成長・三次産業の成長4)産業の衰退=農業収入減少・一次産業の衰退と、きれいにおさまりました。つまり現在の農業に関する多くの問題は、農家一戸当たりの農地面積が小さすぎて業として成り立たない状態である、ということに起因するのです。(まだ続く)