『レ・ミゼラブル』(監督:トム・フーパー 主演:ヒュー・ジャックマン)
滝田栄がジャン・バルジャンを演じた舞台版をみたのは何年前だったろう。このときのジャベールは川崎麻世だった。その観劇前には予習にと舞台の模様を録音したCDを買って聞き込んで臨んだものでした。こうして、この作品の世界観が多少でもわかっているからでしょう良くも悪くも多感になってしまう部分があったので、ぼくの意見はそのあたりを差し引いて聞いていただければと思います。泣けるから笑えるからと、それがいい作品である証拠とはなりませんが、映画館の座席でぼくはいっぱい震えて漏れそうになる声を押さえ何度も涙をぬぐいました。舞台版をみてこんなになった覚えはありません。作品の素晴らしさを映画ならではの手法によりダイレクトに伝えることができていたのだと思います。今回の映画版の方が良かったというのではありません。『レ・ミゼ』に限らず舞台には舞台でしか伝えられない素晴らしい部分があって、それは映像には残せない記録できないものでもあるのです。
この映画で特徴的だと思ったのは歌唱方法です。歌唱力だけを取れば舞台で活躍する人達のほうが断然に上だと思いますが、これは映画ですから遠くにある客席に訴える必要はなく俳優がその場で感じる溢れる感情をメインに描いていくのです。ラップのように歌ったり、話すようにぼそぼそとやってもいい。なんだかお経を聞くようだなんて思う箇所もありましたが、そこは気を取り直し字幕でカバーします。(外国映画でこんなに字幕を見なかったのは初めてだった)そんな感じではありましたが俳優の細かな息づかいが伝わってくるのは本当に良かった。また映画用の演技アプローチがあることも改めて実感できます。舞台版のキャストが同じことをやったら全く違うものになっただろうし、映画版を制作するにあたって映画俳優を使うのは大正解だと思いました。具体的にどうということは説明できません。そう感じたのです。
アン・ハサウェイは見るたびに株があがっていきます、ぼくの中で。近い将来アカデミー主演賞をとることでしょう。彼女がそういう作品にどうか巡り合いますように。
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最終更新日
2012.12.23 17:27:34
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