カテゴリ: 映 画
映画版『鈴木先生』を見ました。 2011年4月~6月にテレビ東京系列にて放送されていた(らしい)テレビドラマ『鈴木先生』が、後に様々な賞に輝き、その勢いから映画化されるにまで至ったなんてことに、個人的にはなんの興味も関心もありませんでした。テレビドラマはあまり見ないことにしているので、少しかわった学園ものだったのかなとか、ぼんやり思う程度でした。そんな2012年の年末にBS JAPANで全10話を数日間でまとめて再放送すると知ったとき、「ちょっと覗いてみるか。面白くないと思えば途中で見るのを止めればいいんだし」と軽い気持ちで見ることにしました。そしたらこれ、いや驚いた。めちゃくちゃ良く出来ていて興奮の連続でした。こんなに面白くて、早く次も見たいと焦がれたドラマはかつてないほどに楽しめたのです。 ものづくりが成功する場合、その陰には勝因となる要素が幾つもあるものですが、この作品における一番のそれは、よくできた原作漫画を見事に脚色した脚本の力にあると思います。原作をそのままテレビに移したとしても絶対に成立しない。原作で描かれたエキスをいかに反映させるのか、腕が試されたところだったはずです。そしてそこは原作とを見比べればわかりますが、テレビ版は本当にお見事で感動的ですらあります。 またテレビドラマを見ていない人は、今回の映画版も見るべきではありません。テレビドラマで描かれたものの上に今回が成り立っているからです。 一応、知らない人の為に簡単に説明しますと。中学の鈴木学級で起こる様々な問題――性、倫理、モラル、マナー、そして多数決とか、そんなデリケートなものに先生と生徒が正面から向き合い、それをいろんな視点から見つめ、見事に描ききっていくのがこの作品なのです。そう聞くと固苦しい内容かと思われるかもしれませんが全くそうはならず、頻繁に描かれる鈴木先生の妄想シーンはとてもエッチでユニークだし、精神をすり減らし壊れていく先生達もとても素敵なのです。 そんなわけで、ぼくは今回の映画版公開がとても楽しみだったのです。 しかしテレビドラマの映画化、映画版か……。 映画版冒頭では聞きなれたオープニング曲と合わせ「レッスン11」という表記が出てきます。それはテレビ版で作られた世界を壊しませんという宣言であるかのようですが、逆に映画というジャンルのファンであるぼくにすれば、そこは物足らないことでした。実を言うとこういう風潮は受け入れたくないのです。今回の映画版も、とても面白かったし満足しています。テレビ版が好きな人はこの映画版もちゃんと楽しめると思います。ですがテレビドラマではなく映画を撮るんだという気概は感じたかったのです。(若き日のカーク船長を描いた『スタートレック』みたいに) 今回の映画化は恐らくはテレビ局やドラマ制作スタッフの意地、アピールでしょう。「こんなに面白いものをうちはつくっているんだ、もっと注目しやがれ」という。その意味においては大成功でしょうし、お陰でぼくも鈴木先生と出会えたのですから大大、大感謝です。 ですから次は映画ではなく、どうかテレビドラマとしてセカンドシーズンが制作されるよう心から祈っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013.01.14 15:39:21
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