北京五彩繽紛～Colors of Beijing

今私の頭の右側、耳の少し上にはこぶがある。
ソファにかけていた時、目の前にいた二人の会話がおかしくて、
体を倒したら、ソファの肘掛に頭を痛打した。
肘掛の角に沿ってぶつけたので、こぶは横長に隆起している。

こんな出来事が発生したのは、日本人駐在員のTさんのお宅。
引越しパーティーの現場でであった。
9月末、もしくは10月初日に引っ越す人がとても多い。
私の周りでも数人が今月新居に移ったみたいだ。
駐在の場合、10月赴任で、住まいも半年ごとに更新のパターンが多いから、
そうなるらしい。

Tさんの新居は、オフィスビルと高級マンション郡が混在する北京の新興ビジネス地区にある。
３３階の広いリビングからはなじみのオフィスビルが見え、
その脇には北京を代表する高級マンションが並ぶ。
一本道を隔てた向こうには、五つ星クラスのホテルとデパートの
コンプレックスになる予定の建物の上で、重機がゆっくり回転している。
さらに目の前の現在建築中のオフィスビルからは、
昼夜を問わず、溶接の火花が下に向かって滴り落ちる。
落ちる火花を目で追うと、マンション郡に埋もれるかのように
背丈が半分ほどしかない古いアパートが、ぽっかり取り残されたように建っている。

「うちの窓からあのアパートを見たら、
蛍光灯だけつけて毎日勉強している学生がいるの。春節のときも休まないで。
ああいうのを見ると、中国の発展はこういう子たちが支えていくんだなあって思うのよ」。

いっしょに窓の外を眺めていた、
お隣のマンションにお住まいの日本人妻・Mさんがしみじみ言う。
多分、オリンピックまでにはアパートは取り壊されて、
もし土地の買い手がつかなければ、北京市が緑地にするらしい。
蛍雪の学生が功をあげるが早いか、彼の住まいはどのみちなくなってしまうのである。
そんな状況で高考（中国の大学共通試験）に臨む心境はどんなものだろう？

引越しパーティは、大いに盛り上がった。
各自手料理を持ち寄りということだったけど、どれもおいしかった！
私はこぶができたのを危うく忘れかけて、ワインを飲み続けていたが、
横長にこぶが張り出し始めたのが気になって、しばらく横になってアイスノンで冷やす。
なにぶん横になっているので、気分が悪くなったのだと思われていたらしいけど、
単にこぶができただけです・・・。

あんまりパーティが楽しかったので、次回開催を約束して帰宅する。
これだけ大勢の人間が、狭さを感じずに、騒音の気兼ねもせずに
日本では集まれはしないだろう。
しばらく定期的にこの集まりは続いていくだろう。
その傍らで、窓から見える風景も少しずつ変わっていくのだろう。