■トリニテイ・イン・腐敗惑星■第3回
■トリニテイ・イン・腐敗惑星■第3回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第3回ある日、特別な奴が,彼一角獣の前に姿を表している。そやつは、親しげに話しかけてくる。「目覚めよ、レムリア。私だよ。思い出してくれ。私は回収子ゲノンだ。覚えていないのか」 その物体は、必死だった。自分のことをわからそうとして。「レムリアだと、それが僕の名前だというのか」「思い出せ、お前が何者なのか。そしてなぜこの惑星にいるのか。この腐敗惑星にいるのか。一角獣は雌雄同体だから、覚えてはいまいがな。君は我々を裏切り、寂寥王(せきりょうおう)の愛人になったんだ」悲しそうな声だった。なにが悲しいのか、一角獣にはわからない。 『僕が愛人だと、どういうことなんだ』「この腐敗惑星で何故、お前だけが、腐敗しない。それがおかしいとはおもわないのか」「なぜというんだ」「寂寥王の残留思念が、君の体に働いているのだ。寂寥王の分身を守るために、変身させられた」「何の話かわからない」 この生物、回収子ゲノンはそうわめいている。どうやら、これは声ではなく、彼の意識の流れの中に直接語りかけてくる。心の中にはいってきたのだ。「助けに来たんだよ。さあレムリア。私と一緒に帰ろう。お願いだ」しかし、彼は答えるかわりに、その生物、回収子ゲノン、を屠ろうとした。「レムリア、君は私を殺そうとするのか」「かわいそうな、レムリア。君の体は霊体なんだ」その回収子ゲノンの最後の意識だった。『僕のことをばかにする奴は、生かしてはおけない。それに、この腐敗惑星では、どうせ長くは生きていられない』(3) 風族は、この惑星、腐敗惑星、のいかなる場所にも存在した。風族は意識体である。この星に偶然呼び集められ、この場で殺された者たちの残留思念である。すべての生命体が風族になれるわけではない。ある一定の基準があるようだ。だが、どの生物の意識が風族とされ、またされないのか、決定者の姿を見たものはいない。決定者の存在を感じたこともない。がしかし、確かにその存在はあると考えられていた。風族たちはときおり、地表近くにまでおりていくことがある。この星の地表の臭気をふきとばさなければならないのだ。この星の地表はすべて、くさった肉なのだ。ドロドロとしたいやらしい臭いと破裂音がする。ガスが立ちのぼってくるのが地表だった。 風族たちは時折、想像することがある。かってはあの屍肉が我々だったのだと。考えるだけでおぞけをふるう。が腐敗菌を運ぶのは彼ら、風族なのだ。 腐肉は、表面からずっーと地中奥深くまで続いているという。次々から、次へと上空からいろいろな生物が降ってきて、屍肉となっていくのだ。 この星は、いわば宇宙のサルガッソー海だ。■トリニテイ・イン・腐敗惑星■第3回(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/