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カテゴリ:トリニテイ・イン・腐敗惑星
■トリニテイ・イン・腐敗惑星■第11回
(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ 第11回 6) 彼女は、海の中を漂っていた。 総てがまだ未発生なのた。 顔も、記憶も。 ただ肉体だけが、残っている。 その海はこの星の中核部にあった。巨大な球体が腐肉から海を守っていた。 その中で彼女はまどろんでいる。体は透明なカプセルに守られている。何者なのか、た だ一人、この大いなる《静かの海》にたゆとうている。この前はいつ目覚めたのか。だれ もしりはしない。年もわからない。ただ幼児の体型だった。 通常は腐肉の表面までしか降下できないのに、男の乗ったポッドは腐肉を突き切って来た。 降下した男は、この球形世界《静かの海》にたどり着いていた。 男はこの海に装置されたコアにはいった。そこにはモニターが設備されていた。操作卓に前に座る。 「トリニティ、我がこよ、目覚めてくれ、お願いだ」 男の願いが通じたのか、彼女の意識が開いたようだった。男はくいいるように覗きこむ。 男のいる操作卓のあるコアと《静かの海》は透明な膜でくぎられている。まだ、二人は遠く離れているのだ。 男はその少女に精神波を送る。 「君、私がわかるか」 「おじさん、だれなの」 「私は、君に命を与えるためにここに来た」 みしらぬ男はそう言った。 「どういう意味なの」 彼女が聞いた瞬間、操作卓の場所が白熱していた。男の姿は消えている。 「一体、なによ。あたしを起こしてさ。何用なの。へんなおじさん。いい、も一度眠る もん」 再び、彼女はまどろみに戻った。その時には彼女の顔ができあがっている。 男が白熱した後、このコアの付属設備が急に作動し始める。《静かの海》に隣接した設備、そのメインコンピュータが目覚めつつあった 。 この《静かの海》に近接するコンピュータ地下羊宮チャクラ。古代人類の記憶バンク。 《静かの海》で一人の運命の少女が、いままさに誕生しょうしていた。 ● 『おや、発生したようだね。早くここまでおいでよ。私の親よ、妹よ。早くここまでおい で。私がきれいに始末してあげる。ああ、楽しみだわ』 腐敗惑星のどこかで、誰かの意識がそう、語っている。彼女はしたなめずりをする。同 じ顔をしていた。 ●「どうやらあの子は目覚めたようよ」 アリスは父に言う。腐敗惑星の表面で唯一ヶ所。大陸化された場所。 そこが機械城だった。その中にクリスタル=アリスはいた。彼女の精神の中で、何かがコトリと 音を立てて動いたのだ。それは彼女と同一のモノが動き始めたこ とを意味した。同時に、又クリスタル=アリスか、あるいはトリニティかどちらかが相手 によって倒されねばならないことを意味した。本当は二人同時に存在すべきはない個体だ った。 「本当か、アリス。いよいよ時が満ちたのだな」 「そのようよ、パパ」 「お前が「世界子」となれる日が近いのだな」 「うれしい、パパ。私が「世界子」となり、パパがその世界を統べることができるのよ」 「ああ、そういうことだ」 ●「パパ見て、禁断の果実、黄金のリンゴがなったわ」 最後の楽園、その中央にある木に実がなっていた。 「ついに、ついに、時は来たりぬか。我がフクシュウの時は来たのか。セキリョウ王よ、早く出現せよ。我々の手にかかれ」 (続く) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.01.28 23:18:33
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