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カテゴリ:宮澤賢治
「雨ニモマケズ」の英訳に出会った。 これまでにも英訳を読んだことがあったのだが、 今回ほどワクワクした訳に出会ったことはない。 役者はロジャー・パルバースさん。 賢治の作品との出会いが彼をして日本と日本語の虜にしたそうだ。
彼の訳にグッと来た理由を2つ。 一つは、strongという語。 strongは強いと訳されるが、 体が丈夫であることと、心が丈夫であること両方の意味が含まれる。
賢治はもともと体が丈夫な質ではなかった。 花巻農学校の職を辞し、自分で農業を始めたものの、 無理がたたり、2年でからだをこわしている。 なくなったのは37歳。結核であった。 そういう賢治だからこそ、 「丈夫ナカラダ」が欲しかったのだろう。 冒頭のSrtongからは、賢治の思いがインパクトを持って伝わってくる。 訳者の賢治への深い愛と理解の賜物だろう。
2つ目は、主語の扱い。 Heという三人称の主語を用いて書き進め、 最後にきて、 This is the person I want to be. と一人称にしている。 「サウイウモノニ ワタシハナリタイ」という賢治の祈りが際立つ。 He はあくまでも賢治の願う理想の姿なのだ。 Heだと、「男性と限定されてしまうな~」と、 女であるやまんばはちょっぴり残念だと思っていたら、 パルバースさんもそのことを指摘していた。 でも、作者の賢治は男性なのだから、やっぱり He だよね。 こういう、英語と日本語の発想の違いが訳詞の行間から感じられるのも面白い。
パルバースさん:劇作家、演出家、東京工業大学世界文明センター長をこの春退官。 米国出身。オーストラリア国籍。カリフォルニア大学ロサンゼルス校を卒業後、ハーバード大学大学院ロシア地域研究所で修士号を取得。1967年に初来日。現在はシドニー在住。
パルバースさんを通して、 賢治のグローバルな思想の普遍性と新鮮さとを 改めて感じさせてもらっている。 また花巻に行ってみたくなった。(^J^)
付け足し: 安倍さんの所信表明演説にも「強い」が強調されている。 「強い日本」「意志の力」・・・求められる「自助自立」。 違和感を禁じ得ない。 賢治も、みなが幸せな世界を希求していた。 二人の視座は大きく異なる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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