IFFR OPENING NIGHT
IFFR(International Film Festival Rotterdam)が昨日の夜から開催されました。お友達の龍児さんの日記でもこのIFFRの話題はこれからちょくちょく出ると思うので、映画に興味のある方は僕らの日記を両方読まれるといいかも…、です。オープニング・フィルムは招待客向けのスクリーニングがアルゼンチンのエステバン・サピアー監督の『LaAntena』一般向けがワーナー・ハーゾッグ監督の『Rescue Dawn』でした。僕はこの日は仕事があるしその後はオランダ語のクラスもあったので字幕付きでディープな内容の『LaAntena』はちょっときつそうだな、と思ったので、内容が英語でアクション派のムービーであるというネット上の情報に頼り、『Rescue Dawn』のほうを見に行ってきました。チケットは既に予約受付開始数時間後に売り切れだったんですが、僕はダークともう1人オランダ人のパートナーのアレックスの3人で『CAMERA JAPAN』という日本映画際をオランダでオーガナイズしている関係上、ゲストパスをもらっているので、当日の朝にチケットをゲットすることが出来ました。ゲストパス及びプレスパスの所持者にはどの映画にも一般販売用とは別にチケットが用意されていて、ソールドアウトになった映画でもまだチケットが入手できます。このパスは映画のチケットはすべて無料、他にパーティーやQ&A,記者会見やレクチャーなどにも自由に出入りが出来るというもので、自分たちの映画祭のための下準備やコネ作りのためには欠かせないものです。ただしゲスト及びプレスパスの利用者は何日も先の映画のチケットの予約をすることは出来なくて、その映画の上映される前日、当日のみにカウンターにいってチケットを入手するというシステムです。 僕は結局昨日の夜は会社の仕事がいきなり忙しくなってしまったため、結局夜のオランダ語のクラスは休む羽目になり、やっと終わらせたレイアウトを印刷所のサーバにアップロードし終わったのが夜の9時から上映の『Rescue Dawn』の始まる5分ほど前。必死に自転車で突っ走って映画館に到着したら、監督や俳優たちの挨拶中につき入り口は全て閉められていて、結局ドアが開いて中に入れたときにはもう中は真っ暗、前から5番目の、巨大スクリーンを前にずーッと上を見っぱなしで首のこる体勢を余儀なくされる席に座る羽目になりました。Rainer Werner Fassbinder, Volker Schlöndorff, Wim Wendersらと共にドイツニューウエーブシネマを代表するドイツ人監督の1人、Werner Herzogの新作である、この『Rescue Dawn』は、ベトナム戦争中に秘密ミッションを遂行中にジェット機が追撃されジャングルに墜落、ラオス共産主義軍の捕虜となった後に生還したドイツ生まれのアメリカ空軍パイロット、ディエター・ダングラーの実体験をもとに描かれたものです。Werner Herzog監督はもともとドキュメンタリータッチの作品を得意とする作家です。実はこの監督、ダングラー氏の体験記は1977年にもドキュメンタリー映画を製作していて、監督にとってはとても思い入れのある物語であるといわれています。2005年には、動物愛好家として野生の熊の周りで生活を続け、最後には熊に食い殺されたことがニュースをにぎわせたティモシー・トレッドウェル氏の生涯を描いた『GRIZZLY MAN』を発表、絶賛を受けました。他にも『フィッツカラルド』『神の怒り』などといった名作を数々と世に送り出しています。実話に基づいた映画、しかも監督がドキュメンタリーを得意とする人だけに、この『Rescue Dawn』、内容的にもまるで見ている側まで一緒にラオス・タイ国境のジャングルの中にいるような錯覚を起こさせるほどの現実的な描写で淡々と描かれ、ハリウッド的な大げさで超マッチョな戦争映画を期待していた人は肩透かしを食うかも…主演は『American Psycho』や『Batman Returns』などで知られるクリスチャン・ベール。端正なルックスとクールなダンディズムでアメリカでも多数のファンをもつ俳優ですが、今回の『Rescue Dawn』では、捕虜という最低レベルでの生活を余儀なくされる人間の直面する数々の極限的な苦るしみや絶望、怒りといった感情を、体当たりの汚れ役で見事に演じきっています。今回のIFFRはオープニングナイトに上映されたこの『Rescue Dawn』と最終日のクロージング・フィルムの『The Prestige』の主演でもあります。今年のIFFRはクリスチャン・ベールで始まり、クリスチャンベールで終わるわけです。明日金曜日からは僕も週末になるので、スケジュールもぎっしりで、一日4本から5本の映画を見る予定になってます。たぶんこんな風に長々と一本の映画のことを書いてる余裕はないかも…でも凄く良かった作品、印象に残った作品とかがあった場合には出来るだけ書きますね、それでは又。