米大統領選の感想
私はジョンズホプキンス大学の大学院でアメリカ外交史を勉強していたこともあり、今回の米大統領選についての感想をよく聞かれます。何であのような暴言を吐く人種差別主義者が勝ったのか、と。お答えしましょう。「最悪」と「極悪」が戦って、結局「最悪」が勝ったということです。この「最悪」が勝つ条件というのものがあります。ここからは架空の国の話ですから、真に受けないでくださいね。A国の国民は、バカで傲慢で無知(無恥)だとします。ここに二人の大統領候補が出馬しました。一人は利口だが、傲慢で無知。もう一人は利口で、やや傲慢で、そして知識があります。A国の国民は、前者を選びました。というのも、傲慢と無知で親近感を覚え、利口であることで自分たちではできないことをやってくれるのではないか、という期待が膨らんだからです。無知と傲慢さで失言を繰り返す最悪の候補でしたが、陰で陰謀をたくらむような極悪人には見えなかったということです。これに対してもう一方の候補は、やや傲慢であるということ以外、まったく親近感がわきません。自分たちとは全く異なる階級で、きっとずるがしこく我々を騙しながら、自分たちだけで私腹を肥やしていくのではないか、という疑念が広がります。実際、真実が明るみに出て都合が悪くなると、ロシアのせいにしたり検察のせいにしたりして、国民を煙に巻きます。もしかしたら、巨大マネーを背景にしてメディアを巻き込み、この上もない悪逆をやっているかもしれません。だから国民は選ばなかったわけです。目を別の国に転じましょう。B国の国民は、バカで謙虚で無知です。その国の国民は、バカで傲慢で無知な首相を選びました。バカで無知というところで親近感を覚え、その傲慢さで自分たちのできないことをやってくれるのではないか、という期待が膨らんだためです。喜ばしいことに、その傲慢な首相は、次から次へとこれまでできなかったことをやってくれているわけです。すべての政治は、意識的であれ、無意識的であれ、その国の国民が選んでいます。その国のリーダーを見れば、その三分の二はその国民の性質を表わしているようなものです。そのリーダーがバカで傲慢で無知であれば、それは少なくとも自分たちがバカで傲慢か、傲慢で無知か、あるいはバカで無知であることを示しています。あなたの国のリーダーは一体どのような人なんでしょうね。