絶品唐辛子味噌が完成
トウガラシ・コショウ・カラシは世界三大香辛料とされ、主役にはなりえないが料理にとってなくてはならない名脇役である。日本には鷹の爪(タカノツメ)と呼ばれる、トウガラシの代表的品種がある。上向きに実を付けるのが、特徴である。トウガラシはカプサイシンというアルカロイド物質を含有し、これが辛味を感じさせる成分である。カプサイシンとは、トウガラシ属の学名Capsicum から採られた名称である。トウガラシに多く含まれるカプサイシンは食欲増進や血行促進、発汗作用による脂肪燃焼効果などがあるとされている。また殺菌・防虫効果もあり、古くから薬用・防虫の目的でも使われている。米の中に入れておくと防虫効果を発揮するほか、金魚や熱帯魚などの観賞魚が罹患する病気の1つである白点病の初期~中期段階までの症状に効果があるとされる。メキシコあるいはアンデス地方が原産とされているトウガラシは、トマトやジャガイモと同じナス科に属する。トウガラシは「唐辛子」であり「唐=外国」の意味であって、我が国への伝播経路が中国を経由したという事実はない。かつて日本には50種類以上の唐辛子があって盛んに輸出されていたが、出入逆転して現在は輸入の方が多くなっている。料理や漬物の薬味として幅広く使われており、そば屋には七味唐辛子や一味唐辛子が必ず置かれている。沖縄にはキダチトウガラシを泡盛に漬けた「コーレーグス」が、沖縄ソバの香辛料として使われる。幅広く使われる香辛料だが国民一人当たりの消費量としては、それほど多いものでは無い。タカノツメといわれる我が国の代表的トウガラシは、全長6cmほどの大きさで先が尖ってやや曲がった紡錘形をしている。この果実の形から猛禽類の鷹の爪を連想し、鷹の爪の名前が付けられたとされる。ただ今年我が家で栽培したタカノツメは、鷹の爪状に曲がらず真っすぐなものがほとんどである。完熟すると、鮮やかな赤色に変わる。赤くなった果実は乾燥させて丸のまま、あるいは輪切りや粉末にして香辛料として使う。粉末にした鷹の爪は、一味唐辛子と呼ばれる。芥子・陳皮(乾燥した温州ミカンの皮)・胡麻・山椒・麻の実・紫蘇・海苔・生姜などを加えて調合したものは七味唐辛子と呼ばれる。種子が非常に辛いと言われるが、実際に辛いのは種子を包むワタの「胎座」と呼ばれる部分である。生の鷹の爪から胎座を取り除いた種子や果肉には、辛いと感じるほど多量のカプサイシンは含有されていない。しかし乾燥させると、乾燥の過程で辛味成分が胎座から種子や果実に移行するので全体に辛みがまわる。唐辛子の辛さは「スコヴィル値」で表わし、辛さが強いほどこのスコヴィル値が高く辛さが強いことを示す。タカノツメのスコヴィル値はおよそ40,000~50,000だが、超激辛唐辛子として有名なハバネロのスコヴィル値は100,000~350,000で如何に辛いかが想像できる。因みに世界一辛い唐辛子キャロライナ・リーパーはスコヴィル値3,000,000といわれ、目に入ると失明の危険があるという。2013年に世界で最も辛い唐辛子として認定され、ギネスブックに載った。タカノツメは開花後1か月ほどすると、青い未熟な実ができる。4~5cmほどの大きさになったら収穫し、柚子胡椒やトウガラシ味噌を作る。開花後2か月ほどで実が赤く色づいたら、収穫する。収穫方法には株を丸ごと引き抜くか、色付いたものから一つずつ順次摘み取るかの二通りの方法がある。株ごと引き抜いた場合は逆さにして雨や夜露に当たらない場所に吊るし、実がカラカラになるまで天日干しする。摘み取って収穫したものは笊や網に入れて、風通しが良く夜露に当たらない場所で表面にシワができ振ってカラカラと音がするようになるまで乾燥させる。乾燥させた実は密封容器に乾燥材と一緒に入れ、保管する。関西の種苗店から取り寄せたタカノツメの種を、3月彼岸前から育苗箱に蒔いて育て晩霜の心配が無くなった5月10日に定植した。今年の5月から6月は少雨・強風で、夏野菜の苗の多くが捩れ風に吹き飛ばされて枯死した。それでも10数本が生き残り、8月頃から急激に成長してきた。青柚子の皮と未熟なタカノツメに塩を加えて煎った柚子胡椒はあまり使わないので、採取した青トウガラシの全てで唐辛子味噌を作ってみた。以前青唐辛子を包丁で縦に割って素手で種を取り除いたことがあったのだが、手が燃えるように痛くなりその手で顔を触ったため目が開けられないほど痛くなったことがある。無粋な話だが、トイレで用足しするにも難儀した。今年は種を取り除かず、丸のままフードプロセッサにかける方法を選んだ。流石に文明の利器だけのことはあって、ほとんど手や目に痛みを感じることは無かった。唐辛子味噌の作り方は至極簡単でフードプロセッサで粉砕した青実のタカノツメと信州味噌の等量に、味醂と砂糖をそれぞれタカノツメの1/3量、胡麻油を適量加え弱火で煮詰めて完成である。ご飯のおかずやおにぎりの具としても利用でき、食欲が進む。瓶に詰めて冷蔵保存すれば、一年間は保存可能である。先日アメリカからラインで、完成品の唐辛子味噌を欲しいと連絡があった。