若者の貧困
東洋経済オンラインの朝の記事が若者の貧困問題を伝えていた。NPO法人の代表理事を務める藤田孝典氏が書いた文章である。<若者の貧困に大人はあまりに無理解すぎる>(リンク切れご容赦)当然ながらここで言う若者には、一流企業に入ったり公務員になったりした者は含まれない。公務員といっても、国家総合職から地方上級職、国家一般職、市役所、教職など様々なレベルがある。ただ、いずれにせよ、そのどれかに合格すればまっとうな生活ができることは間違いない。また、一流企業に入れなくても、1.5流、2流とランクを落としていき、どこかに入れれば人並みの生活を送れるだろう。特に今は売り手市場と言われているから、知らずにブラック企業に入らない限りはさほどの苦労はしなくても済むと思われる。したがって、記事の著者が焦点を当てている若者は、全体の中ではどちらかといえば小数派と呼べる若者達である。◆これは何も本人が低学歴であったり、コミュニケーション能力が低いということに◆由来しているわけではない。大学を卒業しても、普通に働いて生計を維持することが◆急速に困難になっているのだ。確かに、数ヶ月前にNHKでも特集が組まれていた。単身女性の1/3が年収114万円未満で、その中の特に10~20代を「貧困女子」と呼ぶらしい。さらに細かい定義もあり、家賃を引いて毎月85,000未満しか手元に残らない人達が貧困状態にあると見なされるようだ。労働時間も決して短くはないだろうから、毎日の三度の食事を自分で作るのはつらいだろう。朝夕を自炊して社食があれば安いランチでしのぐしかない。手取り15万円の「貧困女子ではない女性」の一例がネット上に載っていた。食費が月に14,000円というのはすごい切り詰め方だと思うが、いずれにしろこの総額が126,000円なので、残りは24,000円である。日用雑貨品や化粧品、さらには衣類などをその24,000円で賄うわけだ。確かに、裕福な生活とは程遠い生き方である。◆若者たちが働いても「しんどい」状況は、労働社会学者が指摘するように、◆大人たちによって"つくられた"のである。これは主に、年功序列型の賃金形態のことを言っていると思う。ただ、細かく説明されていないのではっきりしたことはわからない。◆たとえば、ブラック企業を辞めたが、すぐに仕事をしないと生活に困ってしまうので、◆急いで再就職をした別の企業も、またブラック企業であったという話はいくらでもある。これらの理由によって筆者は次のように結論づけている。◆「働けば何とかなる」という「労働万能説」はもはや通用しない。藤田氏の文章だけではやや説得力に欠ける部分もあるような気がするが、NHKや他のメディアの特集番組・特集記事を総合すると、確かに若者の貧困は無視できないところまで来ていることがわかる。当然の帰結として、藤田氏は若者に対しての福祉制度が充実していないことを問題視する。◆(若者に対する)社会保障や社会福祉が遅れているからこそ、失業したときに困るし、◆早急に労働や労働市場へ駆り立てられることになる。では、新たに若者のために社会保障を充実させるとしたら、その財源はどうするのだろうか。もちろん藤田氏は大学の客員准教授もやっているくらいだからそれくらいのことは当然考えているはずだ。要するに、「老人の福祉を考える前に、若者の福祉を考えてほしい」と藤田氏は叫びたいのではないだろうか。しかしながら、それを言ってしまうと老人達から総スカンを食らってしまう。そのために一番大切な具体的な政策についてはっきりと言えないわけだ。「老人の福祉を考えるのと同様に、若者の福祉を考えてほしい」などというごまかしの文章を載せなかったのは偉いと言えるかもしれないが、とにかく、「老人の福祉を削って他に回してほしい」と大声で言えない限り、結局は政治家と同じレベルの発言に留まってしまうと私は感じる。※私は何度も「老人福祉は手厚すぎる」と書いているが、 それはお年寄りに敬意を持っていないからではない。 老人の偉大さについては今までに日記に書いたこともある。 だが、お年寄りに敬意を払うことと、 日本という国家の行く末を考える政治は全く別である。 お年寄りを大切にしすぎて国家が衰弱するよりは、 老人福祉を抑えて少しでも国を健全な状態にするのが筋だと私は思っている。