2507317 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

ニーハオ中国

ニーハオ中国

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Freepage List

2016/10/24
XML
カテゴリ:バイリンガル教育
文化特有の対人関係のスタイルは、
他者との相互作用を通じて個人に摂取される文化の一要素であるが、
社会的・文化的存在としての個人の意識――文化的アイデンティティ――
を規定するのに、かなり決定的な役割を演じているという。

では、文化的アイデンティティというのは、
いつ頃からいつ頃までに築かれるものなのだろうか。
著者は上記のことから、対人関係のスタイルに絞って、
それを探ろうと試みている。

この本では親の駐在で日本からアメリカに
連れて出られた子供17人について、
日本に帰国した後の日本的対人関係へのなじみ方を分析し、
九~十歳までに日本に帰国した子はなじみがよく、
十一~十二歳以降になって帰国した子は、日本人同輩者との間が
しっくりいかないことが多いことを発見し、

「文化的存在としての日本人あるいはアメリカ人が、
 外からも観察しうるほどにできあがってくるのは、
 十一歳頃ではないかと推察される」

としている。そして、十一歳頃には外からも観察できるが、
概念的思考ができるようになっていく九~十一歳頃にかけては、
少しずつ対人領域の意味空間を感知・摂取していく
準備的な時期とみているようである。

さらに、7歳でアメリカに赴き、11歳で日本に帰国した後の面接で
日本人の同輩者との人間関係に大きな心理的圧迫を感じている
様子が見られた花子の例を挙げ、

「花子のケースは、相手の言葉で表現されていない気持を読みながら、
 自分の動きを決めていく日本独特のコミュニケ―ション・パターンが、
 小学校五~六年の女の子たちに既にできあがっていることを
示している。」

と分析しながらも、著者は花子が周りの同輩者に合わせるのに
非常な努力を払っていることに注目し、花子は
アメリカ的な考え方や感じ方がまだ人格の内側に深くは喰い込んでおらず、
自分を取り囲む環境が変わるにつれて、自己の行動の準拠枠を
痛みを伴いながらも変えようとしていると解釈している。

では、どのあたりまでが、自己の行動の準拠枠を変えうる、
あるいは新しい準拠枠を受け入れていく
時期なのかというと、様々なケースを集約すると、
だいたい十四~十五歳ごろまでと考えられるようだ。
対人関係領域に限れば、自己像への文化文法の摂取は
十四・五歳頃には一応完成の域に達すると筆者はみている。

対人関係文法を摂取する時期について、
筆者の考察は以下のようにまとめることができる。

(1)九歳未満では、対人関係のアメリカ的意味空間は
  未だ摂取されていないようで、
  帰国した時にその面での違和感に悩むことは少ない。
  日本帰国後の適応は、日本語の力がつくに伴い、好転する。

(2)九歳以降十一歳未満で文化境界を越えた子供は、
  日米間の行動の型の違いを認めることはできても、
  その背後にある意味空間の違いにまでは気付かない。
  一つの文化の意味空間によって行動と感情が左右されだす以前なので、
  ある文化型特有の行動形態から他の文化型の行動形態への置き換えは、
  比較的スムーズに行われる。

(3)十一歳から十四歳の間に異文化社会に移行した場合は、
  新しい環境の文化文法にかなりの心理的軋轢や不快感を感じる。
  それだからこそ、この発達段階に達していれば、
  母国の文化文法を保持しながら、
  新しい文化文法を摂取することができる。
 (理論的には、認知・行動・情動の三側面で
  二文化的になりうる可能性があるが、
  実際は、認知・行動面では二つの文化型を持ち合わせていても、
  情動面は日本的あるいはアメリカ的どちらか一方のパターンの
  ケースしか存在しなかった。)

(4)十四~十五歳以降に異文化圏に入った場合は、
  それまで暮らした母文化の影響を濃厚に受けており、
  異文化圏に移行しても、その文化文法にすぐに染まることはない。
  しかし、必要にせまられて、新しい文化的環境にみあうように、
  外見上は、行動形態が変わってくる。
  行動面ではいわゆるバイカルチュアルな人間になっていく。

(5)異文化の言葉を習得するのに、三年から四年かかること、
  言葉と文化が密接な関係にあることなどの理由により、
  対人関係領域の文化文法に包絡しきるには、
  同一文化環境に約六年居住しつつける必要がある。
  対人領域の意味空間が体得される最も重要な時期は、
  九歳から十五歳までの六年間と思われる。

※文化文法(意味空間)のへの包絡が起こる時期は、
 アメリカ人としての、あるいは日本人としての、
 文化的アイデンティティの形成期とみられる。

※ただ、時期や期間以外にも、その文化文法を持つ人たちとの接触度合いと
 言語レベルが大きく影響することを著者は指摘している。


筆者は、調査の結果から文化文法体得には臨界期があると推測し、
それは九歳頃より十四~十五歳だろうとしている。
臨界期以降(十五~十六歳以降)に渡米した場合は、
頭では日米の違いが分かっていても、
基本的には日本で身につけた対人関係の文化文法を使って暮らしていく
ことになるという。

非常に示唆に富んだ研究である。

つづく。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2016/10/26 10:02:38 AM
コメント(0) | コメントを書く


Profile

つばめ@北京

つばめ@北京

Comments

つばめ@北京@ Re[1]:体育の中考(中学学業レベルテスト)が終了(04/21) >むぎ茶さんへ あたたかいコメント、あ…

Recent Posts

Archives

2024/04

Keyword Search

▼キーワード検索

Category

Favorite Blog

ホンコンスターオー… ホンコンスターオーさん

© Rakuten Group, Inc.