カテゴリ:法人税
最近移転価格税制絡みの記事が目立ちますね。
下記は、武田薬品が移転価格税制の適用を受けて、国税から1200億円の申告漏れを指摘されたという地元新聞の記事です。 東奥日報 移転価格税制は、内国法人と国外関連者(内国法人と一定の資本関係にある会社などのことを指します。)との取引価格を意図的に操作することによって、国内における租税負担の回避行為を防止する観点から、租税特別措置法(66条の4)という法律に定められています。 たとえば日本に本店をおくA社が100万円で製造した商品を、B国の消費者に300万円で販売するとします。 A社はB国において営業活動の拠点として、100%出資の販売子会社を設立しています。 日本の法人税の税率は30%、B国の法人税の税率は20%とします。 皆さんが当該内国法人の経営者であったとしたら、B国の販売子会社に対する商品の譲渡対価をどのように設定するでしょうか。販売子会社に対する譲渡対価をできるだけ低く抑えて、日本国内の所得金額を圧縮して、税率の低いB国の所得金額ができるだけ大きくなるように価格設定をしますよね。 上記のような行為が容認された場合、国内よりも税負担の低い国との取引において、歳入を確保することが困難となります。したがって、このような行為を防止する観点から、内国法人と国外関連者との取引については、独立企業間価格(通常第三者に販売する価格)により国外関連者と取引が行われたものとみなして、取引価格の是正を行うこととしています。 独立企業間価格の算出方法として、独立価格比準法や再販売価格基準法などいくつかの方法が定められていますが、課税当局からは取引価格決定の合理性の説明が求められますので、その算出は非常に難しいものになると思われます。 また国外関連者との取引価格について、更正処分が行われた場合、日本と国外関連者所在地国において二重課税の問題が生じますので、その場合には一定の手続きに従い、租税条約に基づく関係国による相互協議が行われることになります。 国税庁や国外関連者所在地国の課税庁に対する取引価格の事前確認制度も含めて、このような移転価格税制のタスクに対応するためには、日本国内の専門的なスタッフの確保は勿論のこと、海外の会計事務所との提携など、国際的なネットワークが求められることになるため、日本国内で対応できる会計事務所は、首都圏のごく一部の大手会計事務所などに限られているのではないでしょうか。 私も勿論実務で触ったことがありません(笑)が、大手の会計事務所に勤務する知人と雑談した際、移転価格税制のワンジョブで7000万円の報酬を請求した、という話を聞いたことがあります。 私が扱う仕事と桁が2つないし3つ違う(笑)、と驚いたことがありますが、責任の重大さを考えるとそれほど高くないのかもしれません。自分の担当したお客さんに100億単位の更正通知書が届くというのは、いくら大手事務所でもかなり大変なのではないでしょうか。(苦笑) ちなみに私の受験生時代、移転価格税制は毎年のようにAランク(おおやま)として取り上げられていましたが、今年もAランクなんでしょうかね。税務通信の記事なんかを読むと、「国際的租税回避行為は許さない」という税務当局者のコメントなんかもよく見かけます。 実務では全く使うことのない知識ですが、新聞記事を理解する際には、多少重宝します。(笑) そう考えると、今年の本試験でも配点の高い理論問題としては出題されない可能性の方が高いですかね。責任はもてませんが。(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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