ユウとはなうた

妹とユウとひーくんと、４人で買い物に出掛けた。
渋谷のSOMA（ソーマ）cafeのカレー、美味しいっ！



と、ここまでは優雅な休日。



帰りの電車。
ちょうど夕方のラッシュと重なり・・・
（あと、金曜日のクリスマスイブってことも）



ありえんくらいのギュウギュウ詰め！！
大人の私らでも気分が悪くなるくらいの！



抱っこしていたひーくん（２歳９ヶ月）が、だんだん不安な顔付きになり体が強張ってくるのがわかった。
ユウは人に埋もれながらも『僕は大丈夫』と目で合図してきた。



ひーくんは新幹線や電車大好き。
そしてトーマス大好きな男の子。
今日も「でんしゃ、のえる！」（乗れる）とはしゃいでいた。



しかし。
まさかの満員ぎゅうぎゅう電車。
妹、今まではこの事態を避けて空いてる時間にしか乗らなかったらしい。



「しまった！この時間になってしまった！！いつもは気をつけてるのに！」

電車に乗る前、そう言った妹に、

「まぁ、しゃーないやん。なんとかなるやろ。乗るしかないやん」

と、のんきに言った私は甘かった。



自分たちだけなら笑えるけど、子供を抱えてこの電車は・・・かなりの恐怖感。
もう『周りに迷惑が』とかそんなレベルをとっくに越えて『子供の身に危険が』っていうところ。



意識が『この子を守らねば！』というところに集中してる。
後もう少しで火事場のクソ力とか出そうなくらい、こっちの緊張も高まってきた。
酸欠、圧迫、なんとかこの子らだけでも・・・って、こわい！！！



ひーくんが「やだ・・・やだ・・・やだ・・・」と声を出し始めた。
「大丈夫やで。少しだけやから」と言っても、誰とも目を合わせず「やだ、やだ、やだ・・・」と首をふる。



「やだ！かあしゃん！やだ！やだ！」



腕も動かせない状況から無理矢理にひーくんを妹の腕に返す。
たとえ二人が手を離してもひーくんは宙に浮いてると思う。それくらいギュウギュウ。



しかし、ひーくんの緊張と恐怖感は治まらなかった。



「やだ・・！やだ・・！やだ・・！」



「大丈夫、あと３駅だから、大丈夫、ね、ひーくん、大丈夫だから・・・」



落ち着かせようと二人で必死に声をかける。



しかし、ひーくんの緊張は高まるばかり。



「やだ、やだ、やだ！」



そう言ってる間に、風邪気味だったひーくんの鼻からじわじわと鼻水が出始めた。



「ひーくん、鼻拭いてあげるわ」（←このティッシュを出す動きも必死）



「やだ、やだ、やだ、やだ！」



ひーくん、不安と恐怖で、いったい何に対して「やだ」と言ってるのか自分でもわからなくなってる様子。
とにかく「やだ」連呼で首を振る。



首を振るとさらに鼻水が。
ひーくん、拭いてあげる！拭かなあかん！
やだ！やだ！やだ！やだ！やだ！
あかん、あかん、はよ拭かなあかん。
やだ！やだ！やだ！やだ！やだ！






「やだーーーーっっっ！！！」






と、叫んだひーくん、同時に『ふんっ！』と両方の鼻の穴から鼻水を全力で噴射！！
両穴から顎の辺りまでマンガみたいに鼻を垂らして「やだやだ」言ってる ひーくん！！



完全にパニックに陥ってるらしいひーくん！！！
「やだやだ」言いながら、さらに『ふんっ！』『ふんっ！』と両穴から鼻息を出し、ああ、今にも鼻水が落ちそうっ！！
しかしかなりの粘り！
風邪気味鼻水、先程の位置をキープしつつぶら下がっている！！



もー！
ありえんっ！！




満員電車で大爆笑。




ひーくんと向かい合わせに立っていた若いお洒落なお兄さんも、大笑い。
妹は「す、すいません！」と。
でもお兄さんはめちゃめちゃさわやかな笑顔で「いーですよ、いーですよ」とにこにこ笑ってくれていた。



私は大爆笑しながら、一つの事を思い出していた。



それは小学生の低学年の頃。
妹は数々のわけわからん事をしでかしていた。
ここでそれはアカンやろ、って事を、絶対やっていた。
しかも、イタズラとかじゃなく、やった自分も困るような事。



妹はそれを「緊張しすぎたら、なぜかやってしまった」と、後に説明していた。
そんなわけないやん！！なんでやねん！！と、私は思っていた。



しかし。
あれは本当の事やったんや！
緊張しすぎてパニックになってやってしもてたんや！



親の知り合いの家に遊びに行き、夕食をご馳走になったとき。
行儀良くしなければと思い、横にいた妹に「いつもみたいにお皿ナメたらあかんで！」と囁いた次の瞬間、べろーんっと舐めたこと・・・


厳格で恐いと恐れていたおじいちゃんの前で、いきなり人差し指で鼻の穴を押さえ『ふんっ！』ともう片方の鼻の穴から鼻水をぶっ放したこと・・・



などなど・・・
ずっと私が疑問に思っていた、というか、「わけわからん！」と思っていた事が、一気に解決した。



そうか、ほんまにそうやったんや！！！
と。



目の前で、「やだやだ」と、かわいい顔台なしで鼻水を垂らしたまま首を振るひーくんに、昔の妹が重なって、もー、たまらん、やばいぐらい笑い倒した。




ひーくんは完全に妹の子なんやわ。




恐るべし、ＤＮＡ！！