安倍総理の訪米
米国においては、3月1日の『新財政の崖』が迫るなか、去る2月5日、米国連邦議会予算局(CBO)は新たな財政見通しを発表。 それによると、2013会計年度の財政赤字は8,450億ドル(78兆6千億円)の見込み。前年度の1兆894億ドルから、2,399億ドルの改善。結果として財政赤字の対名目GDP比率も7.0%から5.3%へ低下する予想。リーマンショック以降、急激に拡大していた米国の財政赤字は、ようやく13、14会計年度で正常化する見通しが立ちつつあります。 この予測には2つの前提条件があります。 1つ目は、経済成長。2013会計年度は名目3.1%(実質1.5%)、2014年度は名目3.8%(実質2.1%)の成長見通しが前提。さらに、15~17会計年度は、実質ベースで3.9~4.4%の高成長が予測。 その結果、歳入の前年度と比べた増加額は、13年度に2,591億ドル、14年度2,944億ドル、15年度には3,703億ドルと、年を追って大きくなる前提。2つ目は、歳出の抑制。 2009年度における連邦歳出は3兆5,177億ドル。それ以降、昨年度まで歳出額は概ね横ばいで推移。貯蓄不足の米国は財政赤字の拡大に非常に敏感、経済危機の下でも歳出増加には一定の歯止めを掛けてきた。CBOは、本格的に支出サイドが増加する時期について、経済成長が巡航速度に回帰する15年度以降と予測。 最近、オバマ政権はかなり日本寄りの対応が目立つようになりました。 訪米した岸田外相と1月18日に会談したクリントン国務長官は、「領土問題には関与しない」とした米国の従来の方針を転換、「尖閣諸島は日本の施政下にある」と明言。2月11日の記者会見では、国務省のヌーランド報道官は、「この見解はケリー国務長官にも引き継がれる」と強調。 また、最近の円高是正に関しても、いきり立つドイツなど欧州の一部を尻目に、米国は冷静な姿勢を維持。 全体として日本に好意的な方向へと軌道修正している理由は、1)安倍政権がここ数代の内閣と違って長期化する兆候を見せていること2)米国の財政赤字削減に日本の役割を期待しているから(これはいろんな意味がありそう・・・) 「強制削減」の最大の対象である国防費については、財政の崖を乗り越えたとしても、歳出抑制上の大きな課題に他なりません。東アジア、極東地域の安全保障で日本が資金面も含めて一部にせよ米国の負担を軽減してくれるのであれば、それはオバマ政権にとって歓迎すべきことです。 来週、安倍総理が訪米。オバマ大統領と会談しますが、意外な歓迎を受けるかもしれないです。TPPについても、米国側から「聖域なき関税撤廃」とはならない方向で、何らかの言及がある可能性が皆無ではありません。 ただし、外交ですので、日本がそれ相当の「応分の負担」を求められることは確実でしょうが・・・。