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2023.09.05
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テーマ:読書(8213)

書名



空想の海 [ 深緑 野分 ]

目次



髪を編む
空へ昇る
耳に残るは
贈り物
プール
御倉館に収蔵された12のマイクロノベル
イースター・エッグに惑う春
カドクラさん
本泥棒を呪う者は
緑の子どもたち

引用


「要するに本とは、無数の言葉を書いてまとめ、読むためのものなんだ。(略)それもただの文字ではない。読むことによって世界は広がり、あり得ないものが見え、遠くへ旅し、一度の人生では経験し得ない物語を味わえる。見た目はこんなに薄っぺらい代物なのにね。本は圧縮された小宇宙なのさ」


感想


短いお話が11篇入った本。

世界が滅び、舟に本を積み込み海へ捨てる生き残り。
妹の髪を幼い頃から編んであげていた姉。
イースターの日に、生卵を盗み出す少女。
疎開してきた少年と、先の戦争を経験した老人。
世界の終わりで、幻の自転車をつくる子どもたち。
どちらかというと、少し不穏な、「世界の果て(終わり)」が漂う空気の物語が多かった。

この本を盗む者は [ 深緑野分 ]
のスピンオフ「本泥棒を呪う者は」が収録されているので、あの町の呪い(ブックカース)がどう発生したのか、謎の「おば」の出生の秘密とか、そこらへんを読みたいならこの一編だけでもぜひ。

たまきの本好きというか、本への執着は異常の域。
でも彼女は本当に本当に本が好きで、人間よりも本が好きだったんだなあ。
物語は人間の命よりも重い存在だと彼女は言う。
しかし人間が存在しなければその本も存在しなかったのだから、逆説的ではある。

本好きで人間嫌い、あるいは人間が怖い。
という人は本好きに一定いるのだと思う(私だ)。
だって本は、文字は、書いてあるとおりのことを表明する。
テキストに依存する。
親しげに笑いながら裏で暴言を吐いたりしない。
本は人よりも信頼に値する−−−。

けれど同時に、それは「人間」そのものへの興味と愛情が尽きぬことでもあるのではないか。
本。物語。
ひとが作り出すもの、への絶対的な信頼。

たまきは言う。
本は圧縮された小宇宙。

不思議だ。紙とインク。あるいは電子の表示。それだけで別のものが見える。
あるときには風も匂いも、手触りさえも感じることが出来る。
本を開けばそこには別世界が広がる。

たまきは物語を語る。リドル・ストーリー。
彼女は町の人間が嫌いだった。本を汚すから。大切に扱わないから。

私は子供の頃から考えていた。
書店に並んでひとりの人に買われていく本と、図書館に並んだ本と、どちらが幸せなのだろう?
私は図書館の本になりたい、と思った。
ボロボロになっても、色んな人の手に渡って、色んな人に読まれたい。
本棚を出て、色んな景色を見たい。
そして図書館の本棚に戻ったら、みんなでそこがどんなところだったか、その子がどんなだったか、どんなふうに自分を読んだか話をするのだ。
返却される。棚に戻る。借り出される。
閉館後の図書館にはきっと、本たちのひそやかな囁きが、さざめいているだろう。


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最終更新日  2023.10.06 23:49:24
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