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カテゴリ:会計
先日のブログで、流動資産の繰延税金資産が多過ぎると、翌期にそれを取り崩す必要が発生する危険性(取り崩す場合は、法人税等調整額に計上して、会計上の税金が追加されます。)があること、そして翌期決算予想の妥当性について、書きました。
似た事例を見つけましたので、レビューしてみます。 まずは、フェイスの2007年3月期の決算短信をご覧ください。 流動資産の繰延税金資産に、13.5億円が計上されています。 これを使い切るためには、13.5÷0.4=33.75億円の税引前利益が必要になります。 税引き後利益としては、最低でも 33.75×0.6=20.25億円以上となります。 翌2008年3月期予想を見ると、経常利益17億円,純利益13億円となっています。 計算より7億円ほど純利益が足りないですね。 繰延税金資産の取り崩しによる下方修正のリスクあり、と判断します。 2008年3月期の結果を見てみましょう。 経常利益 : 19億円 税引前利益 : 21億円 法人税等 : 5.5億円 法人税調整額: 7.5億円 純利益 : 5億円 税引前利益段階までは、計画通りだったようですが、純利益は8億円未達という結果でした。 期初の予想通りに業績が進捗しない事は、ある程度は仕方が無い部分もありますが、その理由が重要です。 法人税等調整額に注目してください。 7.5億円分税金を追加で計上し、法人税等とあわせた実効税率は、62%近くになっています。(通常は40%程度) 法人税等調整額のうちの大きな部分は、繰延税金資産の取り崩しの可能性があります。 会社によっては、決算短信の(税効果会計関係)というところに、法定実効税率と大きくずれた場合の理由が記載されているのですが、フェイスの決算短信では省略されていました。 そこで有価証券報告書を見たら、ずれた理由の大きな項目として、以下が記載されていました。 評価性引当額の増減 13.47% 税務上の繰越欠損金の利用 -6.99% のれん償却 11.83% 「評価性引当額の増減」というのが、繰延税金資産の取り崩しではないかと思います。 「税務上の繰越欠損金の利用」というのも、繰延税金資産の一部に入っていたようですが、使いきれなかった分を、評価性引当額の減少として計上したものと、推察します。 (どなたか詳しい方がいらっしゃいましたら、コメントお願いします。) 非常にラフではありますが、この方法は下方修正リスクの判定に実用できるかもしれませんね。 フェイスの今期を見てみましょう。 流動資産の繰延税金資産が7.6億円ですので、7.6÷0.4=19億円 の税引前利益が必要です。 純利益は、19×0.6=11.4億円 以上必要です。 ※実際にはフェイスの場合、繰延税金資産の取り崩し以外の理由により、実効税率は変わりそうですが、とりあえず無視します。 会社による今期予想は、経常利益10億円,純利益1億円となっています。 うーん、全然合いませんね。 ただし予想経常利益と比較して、純利益が少なすぎます。 既に繰延税金資産の取り崩しを見込んでいる可能性があります。 税引前利益は経常利益と同水準の10億円とすると、法定実効税率40%を引くと、純利益は6億円になります。 そこからさらに繰延税金資産の取り崩しをして、法人税等調整額が5億円程度発生することを見込んだ結果、このような予想をしているのでしょうかね? アセット・インベスターズと共に、今期決算に興味が湧きます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.07.05 13:15:45
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