|
カテゴリ:会計
「棚卸資産の評価に関する会計基準」が適用されてから、原価以上で売れる見込みがない棚卸資産は、売却想定価格まで貸借対照表上の簿価を切り下げ、その分を損益計算書では評価損として原価計上するようになりました。
これは業界に関わらず全企業に該当することですが、特に不動産業界において、その影響が大きいように感じます。 不動産業界でどのような影響が出るのか、気付いた事をまとめます。 1.PBRはあてにならない 解散価値である純資産よりも時価総額が低ければ、割安だと評価される場合があります。不動産業界には、PBR1倍割れの会社がたくさんあります。 これらは割安と考えても良いのでしょうか? 不動産業界の場合、次のような特徴があります。 ・棚卸資産は不動産であり、市況変動により物件価格は大きく変動する。 ・総資産に占める棚卸資産の割合が大きい。 ・多額の借金により、棚卸資産を購入している。(自己資本比率が小さい) その結果、棚卸資産に多額の評価損が発生する可能性があり、時価総額が純資産を大きく下回っていて一見割安に見えても、あっという間に債務超過になる危険性があります。 先日のダビンチ が典型例ですね。 年間利益の数年分が、あっという間に評価損で消えてしまいますので、純資産額はあまりあてにできないと思います。 2.評価損計上後に、V字回復は可能か? 固定資産の減損処理の場合には、減損により固定資産額が大きく減少し、その結果翌期以降の減価償却費を減らす効果があります。 そのためV字回復を図ることも可能です。 しかし棚卸資産の評価損の場合は、翌期のV字回復は難しいと思います。 棚卸資産の低価法による評価損では、簿価(=原価)を売却想定価格まで引き下げます。仮に想定価格で売却できたとしても、粗利はほとんど期待できません。そのため、評価損を計上した物件を多数売却することになる翌期には、売上高粗利益率は低下することが見込まれます。 しかしここで収益力が低下したと判断すべきではありません。 評価損を計上した物件を売り切ってしまえば、その後は通常の粗利率に戻ります。したがって翌々期には、利益率は急回復することが期待できます。 3.繰延税金資産の取り崩しに注意 評価損を計上しても税務上の損金にはならないため、繰延税金資産が計上されます。不動産業界ではその額が、非常に大きくなりがちです。 繰延税金資産は、翌期以降に十分な利益がでないと相殺できず、取り崩すはめに陥ります。実際にここ数年、繰延税金資産の取り崩しにより下方修正を発表した企業が、多数見受けられました。 繰延税金資産の額が、収益力に見合っているのか、注意する必要があります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[会計] カテゴリの最新記事
|