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カテゴリ:平和運動
岡山県が国民保護法が求める「岡山県国民保護計画(素案)」を作った。このたった一ヶ月間(9/15~10/14)で、県民の意見を募るのだそうだ。いわゆる武力攻撃を受けたときの臨時体制をどうするかという計画である。9月15日付け朝日新聞地方版によると、その骨子は以下の通り。
【計画の目的】 ・武力攻撃から国民の生命、身体、及び財産を保護するとともに、武力攻撃の及ぼす影響を最小とすることを目的とする。 【基本方針】 ・国民保護措置の実施に当たっては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利を最大限尊重する。 ・指定公共機関及び指定地方公共機関の自主性を尊重する。放送事業者である指定公共機関等の実施する国民保護措置については、放送の自律を保障することにより、その言論その他表現の自由に特に配慮する。 【計画が対象とする事態】 ・武力攻撃事態(着上陸侵攻、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空攻撃) 【県の体制】 ・24時間即応可能な職員連絡体制を確立する。 【関係機関との連携体制】 ・近隣府県と防災について締結した相互応援協定を、武力攻撃災害にも適用できるよう見直すなどし、広域応援体制を整備する。 【武力攻撃事態等への対処】 ・県は首相の通知を受け、知事を本部長とする国民保護対策本部体制をとり、原則、全職員が配備につく。 ・国と緊密な連携を図り、防衛庁長官に自衛隊の派遣を要請する。 ・国から警報の通知や避難の指示を受けたときは、直ちにその内容を市町村長、放送事業者、県議会などに通知する。 ・国から救援の指示を受けたとき、または、緊急を要するときは自らの判断で、医療の提供、被災者の捜索・救出などを行う。 しかし、これではぜんぜんイメージがわかない。しかし原文は膨大なものである。一応計画素案はA4で138ページ、PDFファイル(1.5MB)で岡山県危機管理課のホームページからダウンロードが可能である。 一読した感想は結局、憲法の前文にある諸国民を信頼する方向ではなく、仮想敵国やテロリストの恐怖をあおり立てて国民を戦時状態に置くための思想動員が目的になっている感じがする。 主な論点は平和委員会の中尾元重氏が「『国民保護計画』の策定をめぐる状況について」で述べている通りで、私も同感である。 少し付け加えて言うと、もともと誰も経験のしたことのない状態から計画を立てているし、あってはならないことを考えているわけだから、前提の軍事状況自体何の根拠もない。核兵器攻撃で地下へ避難するのを指示することが果たして適切なのか、わからない状態でマニュアルに書いてあれば、馬鹿な公務員は地下への非難を通告するだろう。放射能汚染に対して、ヨウ素の服用が指示されているからといってどれほどの効用があるのだろう。今アメリカでは大規模災害に対する不備が指摘されているが、この「国民保護計画」はそのまま大災害に対する防災計画に転用できる事例が多い。私はこんな計画に対してよりも防災にもっとお金をかけるわうが生産的であるといいたい。 しかも、市町村で、学校で、啓蒙活動や訓練に努めると書いてあるが、ここがさらりと書いてあるのがかなり不安である。 たとえば次のように書いてある。 (2) 県による研修の実施 県は、市町村と連携し、国が作成するビデオ教材やe-ラーニング、外部有識者等の積極的な活用を図るなど多様な方法により研修を実施する。 2 訓練 (1) 県における訓練の実施 県は、国、他の都道府県、市町村、消防、警察並びに本県の区域を管轄する海上保安部及び自衛隊の部隊等と連携して国民保護措置の円滑な実施のための訓練を行う。 毎年有事の備えて、「海外から敵が攻めたときはこんな心構えが必要ですよ」という偉い人の講演があり、「自衛隊の部隊等と連携して」有事訓練をお上が行うのである。問題はこれらのことが防災訓練といっしょに書いてあり、あまりあからさまに書いていないということである。県の計画はだから相当慎重に書かれてあるのだが、実はこれから市町村でこの保護計画を受けて更に具体化される。無数に作られる。 それだけでない。 指定企業も保護計画をつくることが求められている。企業の計画はもっと非民主的なことが書かれる可能性があるだろう。果たしてここで勤めている人たちはそのことに気がついているのだろうか。いうまでもなく交通、運輸、マスコミ、等基幹産業ばかりである。 具体的には日本放送協会岡山放送局、山陽放送(株)、岡山放送(株)、テレビせとうち(株)、西日本放送(株)、(株)瀬戸内海放送、岡山エフエム放送(株)、(社)岡山県トラック協会、(社)岡山県バス協会、中鉄バス(株)、宇野自動車(株)、両備バス(株)、備北バス(株)、井笠鉄道(株)、岡山電気軌道(株)、下津井電鉄(株)、井原鉄道(株)、智頭急行(株)、水島臨海鉄道(株)、両備運輸(株)、岡山ガス(株)、(社)岡山県エルピーガス協会、(社)岡山県医師会、(社)岡山県看護協会 こういう計画は必ずヒートアップする。しだいと「戦前の雰囲気」が作られていくだろう。精神の動員が始まる。 意見は、メール(kikikanri@okayama.lg.jp)、ファクス(086・225・4659)、郵送のいずれかで、〒700・8570 県危機管理課(問い合わせは086・226・7385)へ。 追記 当然のことながら、これは岡山県だけの問題ではない。 必ず、どの県も現在すでに国民保護計画を作成しているか、県民に意見を募集しているか、作成中である。そして来年以降は市町村でこのミニ版が作られる。小さな村では戦前とまるで変わらない「決まり」がどうどうと作られる可能性は大きい。企業でも作られる。まともな労組がないところ、あってもきちんとしたチェック機能がないところでは、更にトンでもない「就業規則」が作られるだろう。それらはなかなか新聞にも載らない。そうやって「もはや戦前である」という状況が作られていくのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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