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カテゴリ:読書(ノンフィクション)
「構造改革政治の時代 小泉政権論」 序章を私の責任で要約してきた。その最終回である。ここではパンドラの箱に残ったわずかな希望が示されている。確かに、現政権は急速に進む国民の貧困化にも、外交の矛盾にも、明確な手立てがうてていないと思う。しかし、少子化対策やら、教育基本法改正案やら、何らかの手立ては打ってきている。有効な手立ては打っていない、そこの分析をしているだけではいけないのだろう、ではどうするのか。みんなの知恵を借りたい。 四、矛盾と対抗の構想 1.階層分化の増大と新たな統合様式の未形成 では小泉政治は前途洋々なのか。いや、さまざまな形で不満と鬱積と統合の危機を昂進させることは必定である。 ひとつ、階層分化の増大と貧困層の蓄積、社会保障の切り捨てにより社会の統合様式は危機的。それが、ホームレス、自殺者、犯罪発生率、児童虐待、DV、ニート、の増加になって現れている。 ひとつ、小泉は有効なてだてを打ててない。むしろ、これを切り捨てて構造改革に専念するのが、小泉流のやり方になっている。そのために、既存の自民党利益誘導型政治に代わる統合が形成される兆候は見られない。このまま進展すれば、不満の増大は政権を揺るがすだろう。 ひとつ、今のところ模索されているのは、アメリカ型階層型社会。(上層の知的道徳的ヘゲモニーにより社会秩序を図る、二大政党制で不満を吸収、治安と管理体制の強化)もう一つは新保守主義的構想(教育基本法の中身)どちらもリアリィティはない。特に財界に危機感は無い。彼らは自分の会社だけしか見えていない。「我が亡きあとに洪水よきたれ」とは彼らの心情である。 2.軍事大国化の隘路(ネック) 靖国問題にしてもジレンマに陥っている。もし海外武力派兵が現実化すれば、戦死者が出たときどうするか、国民的な決着がつけれていない。 改憲による武力行使の正当化は靖国以上のインパクトをアジア各国に与える。戦後のアジアへの進出と発展の背景には明らかに九条が有った。経団連も同友会も歴史問題については日本にきちんとした総括を行うことを促しているが、一方で改憲を求めている。財界は矛盾しているが、もし本気で経団連がアジア市場の統合を考えるなら、日本の軍事大国化の方針は根本的に見なおさなければならない。 政府は安保常任理事国入りで失敗した。アメリカが無視するとは読んでいなかった。さらに軍事大国になってもアジアはなにも言わないと思っていた。あきれるが、アメリカの方しか目を向けていなかったためである。日本の外交の失敗は決して小泉一人で起こっているのではない。むしろ、日本のグローバル軍事大国化に伴って起こっているのである。 3.対抗の構想の必要性 こうした現状の元で、対するオルタナティブの形成が、緊急性を増しており、一刻の猶予もならない。対抗構想を労働組合、政党、さまざまな団体のなかで真剣に集団的に討議し公表し、一つの絵にまとめていく作業が望まれる。民衆のマニフェスト作りが求められるのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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