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テーマ:映画館で観た映画(8350)
カテゴリ:邦画(07)
「ゆれる」
監督 西川美和 出演 オダギリジョー、香川照之、新井浩文 、真木よう子 地元のミニシアター、シネマクレールではこの2週間「ゆれる」のアンコール上映をしている。ちょうどこの映画が上映されている頃、私が韓国旅行の途中だったので、見逃していた。評判だけは聞いていたので、ある程度は事前情報を仕入れたうえでこの映画をみたのがよかったのかもしれない。わりと混乱せずに見ることが出来た。 台詞による説明や、わざとらしい演出も無い。みんなの評判からなんとなく、大きく揺れる橋が何回も出てきて、観客にイメージだけを喚起するような難解な映画かと思っていた。ところが、橋は映像の中ではほとんど揺れない。非常に硬質でリアルな映像が続く。うーむ、これを新人といっていいような女性監督が作ったのか。やっぱり映画は実際映画館で見てみないことには分からない。 確かに分かりやすい映画ではない。幾つかの事柄は、観客の判断にゆだれられている。ただし、お酒をめぐるエピソードで兄がどこまで知っていたか推し量れるし、腕の蚯蚓腫れによって弟の疑惑がどのように生まれ、昔の八ミリフィルムを見ることでどのように解消されたのかも推し量れる。最終的に兄はバスに乗ったのか、乗らなかったのか。は観客にゆだねられているだろう。私は乗ったと思う。兄はもはや田舎には帰らない。 香川照之の演技は素晴らしかった。06年の主演男優賞は彼以外にはありえないだろう。えっ、主演はオダギリジョーなの? うーむ、仕方ない。彼がもしも助演男優賞を取れないような映画賞なら、私はそれを信頼しない。 これは見事な心理劇であると同時に、現代日本の片田舎の現実をも見事に切り取っている、それを証言する作品になっている。囲炉裏が残っているような旧家に、葬式には親類縁者が12~3人はすぐに集まるような繋がり。「町はおにいちゃんを温かく迎えてくれるよ」「お前、本気でそう思っているのか‥」と無実を晴らそうと励ます弟に兄は言う。35歳独身。いつ潰れるかわからないようなガソリンスタンドを経営している、気配りの出来るまじめがとり得な、女にもてない、年老いた父親を抱えている、旧家の嫡男。そんな彼に確かに「人殺し疑惑」は決定的な痛手だろう。彼の未来は限りなく暗い。反対にいえば、現代日本の田舎とはそういうところだということだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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