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テーマ:映画館で観た映画(8310)
カテゴリ:邦画(07)
監督・脚本 : 周防正行
出演 : 加瀬亮 、 瀬戸朝香 、 山本耕史 、 もたいまさこ 、 役所広司 百聞は一見にしかず。 万が一あなたが冤罪に見舞われて、被疑者になったとする。やっていないのだから容疑を認めない。真実はいつか必ず勝つはずだ。だから何も心配しなくていいのだ。と、思って一日ほど我慢すればすむことなのか。 全然違う、ということをこの映画は描いている。 本来は単館上映になるような内容だと思う。映画の出来が、そうなのではない。クスリとするような場面はあるけれど、万人がなかなか自分の身近に考えることが出来るような現実ではないからだ。出来は良い。こんなテーマをよくもここまでエンタメ近くまで作り上げた。周防監督でないと、出来なかった。ほかの監督なら、絶対深刻な映画を作るか、途中で妥協して匂わすだけの映画を作るかだっだろう。忘れもしない、96年2月3日岡山東宝で、公開直後の「Shall we ダンス?」を見始めたとき、冒頭に「物語せよといへ。われ汝の耳を魅せる話をせむ」というシェイクスピアの言葉が出る。なんて生意気な、と自分を省みずにそのときは思ったのだが、映画が終わったときにはもうすっかりその言葉に納得している自分がいた。長かった。次回作を待って、11年。新しい周防監督を見た。祝着。 前宣伝で、「一日目の弁護士料はタダ」だとか、「無罪になったら拘留期間の日数分だけ一日約一万出る。アルバイトだと思えばいい」とかトリビアな場面を見て、案外被疑者になるのもいいかも、などと軽く考えている方はこの映画を見た後にもう一度そのように思えるのか、試してみたらいいと思う。 例えば、私は二日目のあの地検での接見、耐えられそうもない。簡単に「自白」してしまいそうだ。(主人公が自白したかどうかは映画を見てのお楽しみ。)いや、あれは自白ですらない。しその辺りは「一見」して欲しい。そして、あの裁判場面。日本の裁判制度は「推定有罪」なのだという事がよく分かる。 私は絶対罪など犯さないし、ましてや冤罪など疑われることはしない。という方も多いだろうと思う。私もそうだ。でも例えば、この前安倍首相はこんなことを言っている。 「共謀罪」の通常国会成立を指示=野党に理解求める-安倍首相(時事通信1/19) 共謀罪とは、浮気性の夫を憎んで「もう殺してやりたいっ」と友達同士で酒を飲みながら盛り上がって、そのうちの一人が警察にタレコミをすればもうそれだけで殺人罪として被疑者になるという代物である。提案者側はそんな犯罪は想定していない、というかもしれないが、実際条文案の中には殺人罪も入っている。法律は出来てしまえばひとり歩きする。 首相の周辺は、支持率が下がっているのに、今そんな本音を出されたら参議院選挙に影響する、と否定に躍起である。けれどもこの法律が不要だとは決して言わない。 日本は今、「夜警国家」の一歩手前だ。誰もが冤罪をこうむる可能性が出てきた。 映画は「夜警国家」がテーマではない、けれども万人に関係する映画であることは確かだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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