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カテゴリ:労働
昨日の「天声人語」に、こんな一文があった。
(寺山修二の)詩歌や言葉の数々は、多くの人の心を一突きにして、忘れがたい印象を残した。 だが、心ない者がナイフを振りかざすと、人を死に追いやる。上司から「給料泥棒だ」「存在が目障りだから消えてくれ」などと言われ続けた会社員が首をつった。東京地裁は一昨日、暴言と自殺の因果を認め、労災と判断した。 「会社を食い物にしている」「お前のカミさんも気がしれん」。残された遺書には殺伐とした言葉が並ぶ。口をつく言葉は、音や調子しだいで、字づら以上に凶暴になる。浴びた側の心の傷を、裁判長は「人格や存在自体を否定するものがあった」と指摘している。 これは、このようにいわれた人が自殺にまでいたり、それが幸いにも地裁で労災と判断されたから、初めて記事になったのである。ところが、これと同じようなことをいわれている人間は今現在日本にはごまんといるはずだ。少なくとも私は三人知っている。 さて、前回紹介した『15歳のワークルール』には、こんな設問がある。 「昼休みがきらいです。会社に文句を言ったら同僚からイジメにあい、昼休みにお弁当を食べるときに誰も一緒に食べてくれなくなりました。そのうち忘年会や新人歓迎会にも呼ばれなくなるのではと心配です。」 それに対して筆者はこのように書く。 人間関係のあるところ、いじめは絶えません。ただ、最近は職場のイジメは、何らかの形で会社が関与していること、退職されることがその目的となっている点に特徴があります。労働問題たるゆえんです。次のようなパターンがあります。 一、仕事または適正な仕事を与えない。 二、仲間から排除し、孤立化させる。 三、個人の尊厳や誇りを損なう非難や攻撃を行なう。 このような行為は許されず、労働者の人格権を侵害するとして損害賠償の対象となります。裁判所も、人間関係を形成する自由を侵害するとしてます。(関西電力事件) 通常は会社が関与しているので、会社に対する請求が可能です。同僚が『自主的に』イジメをしていた場合には、同僚に対してだけしか賠償請求できません。ただ、イジメをとめさせて欲しいと会社に相談したにもかかわらず、会社がほおっていた場合には、会社にも賠償請求できます。会社のは、適正な職場環境を整備する義務があるからです。ともかくセクハラのケースと同様に迅速に反撃する必要があります。 もっとも、事実関係を明らかにする必要があるので、いじめられたらすぐメモしておいてください。学校でのイジメと違い、大人のイジメは証拠を残さないのでやっかいです。 なお、職場はあくまで仕事の場なので、上司や同僚が厳しく接することもあります。厳しくしなければ伸びないからです。これはイジメではありません。 ‥‥‥たいていは、相談してきたときには、精神的に参りきって本人はやめる決心をしていて、それでも『自己都合での退職』は我慢できないということで『あいつらに一泡吹かせてやりたい』と言うことで公の機関に相談することが多い。そうなると、あと交渉したとしても解決金とかで終わるしかない。問題は会社の『風土』を変えることなのであるが‥‥‥ああ、やるせない。この本には、そうなる一歩手前で、どうすればいいのか、と言うヒントが盛りだくさんです。現在働いている人が、今の会社で『これはもしかしたら労基法違反?セクハラ?パワハラ?』と疑問に思っていたなら、お勧めできる本です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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