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カテゴリ:感想【小説】
横山秀夫さんの「クライマーズ・ハイ」を読みました。
初・横山秀夫さんでした。 去年、文庫新刊で本屋さんで見かけたとき、爽やかでポップな色使いのイラストに惹かれて手に取ったものの、それに反して重いテーマに躊躇して元に置いてしまった本です。 ”御巣鷹山”と聞けば一定の年代以上の人が誰しも思い出す、史上最悪の航空機事故、日航ジャンボ機墜落事故を扱った小説です。 当時まだ子供でしたが、旅先で目にしたニュースはかなりショッキングでしっかりと覚えています。 飛行機に乗ったばかりだったからかもしれません。 また、クラスメートが夏休み中に大阪に行く、と話していたので万が一乗ってたら、と乗客名簿を気にして見ていた記憶があります。 作中にも出てきますが、事故と同日の1985年8月12日は、当時世間を震撼させていたグリコ・森永事件の犯人から終息宣言が送りつけられた日でもあるそうです。 また、つくば万博の開催期間中でもありました。 昨日も大事件について触れましたが、そういうショッキングな大ニュースについては、その日の自分の行動とセットで思い出すことが出来ます。 例えば、 1991年5月 信楽高原鐵道列車衝突事故 1995年1月 阪神・淡路大震災 1995年3月 地下鉄サリン事件 2001年9月 新宿歌舞伎町ビル火災 2001年9月 アメリカ同時多発テロ事件 2005年4月 JR福知山線脱線事故 といった大ニュースについては、いつ、どこで、何をしているときに聞いたか、鮮明に覚えています。 それにしても、こうしてみると約5年周期で大事故が起こっているようで恐いです。 また本筋から脱線しました。 それだけ強く記憶に残っている事故の一つだ、ということが言いたかった訳です。 本作は、確かに御巣鷹山の事故を取り扱ってはいますが、主題がそこにあるわけでは無いので、事件の詳細をそこまで事細かに描いたものではありません。 読む前は、事件モノのドキュメンタリータッチなお話かな、と思っていたんですが、私は、組織モノ(というジャンルがあるか分かりませんが)として読みました。 墜落現場となった群馬の地方紙の一ベテラン記者が、この事故の全権デスクを任され、新聞社という特殊な組織の中で苦悩する様を、家族の問題などを絡ませながら描いています。 過去の栄光に囚われかつての熱情を失いかけている上司や、現場至上主義で鼻っ柱の強い部下、同期や他部署との衝突やわだかまり。 自身の新聞記者としての紙面に対するこだわり、葛藤と迷い。 幼い頃の家庭環境に起因するトラウマからか、家族との特に息子との関係を上手く築けないもどかしさや諦めのような感情。 そして報道によって伝えられる命の重みと現実に身近にある命との温度差。 事故そのものよりも、そういった人間ドラマとして描かれています。 そういう意味では架空の事故を扱ってもストーリーは成り立つわけですが、現実に起きた誰もが知っている大事故を事故発生からの時間軸に沿ってストーリー展開することで、よりリアリティのある緊迫感が演出されています。 リアルなだけに、重く、主人公の感情が痛々しいほどですが、事故から17年後に当時果たせなかった衝立岩への登頂にチャレンジする姿を挟みながら、明るいラストを予感させてくれます。 すごい作品だと思います。 大変面白かったです。 横山秀夫さんは当時、上毛新聞(群馬の地方紙。作中にもライバル紙として登場します)の記者であったとのこと。 なるほど、道理で、という感じです。 この方はメジャーな作品も多く、本屋さんでも良く見かけているのに、どうしてか今まで食わず嫌いしてたようです。 他の作品、期待して読んでみたいと思います。 それと、山崎豊子さんの「沈まぬ太陽」ですね。 これは大作ですが、絶対読みたい。 ●映像化作品 クライマーズ・ハイ〈2枚組〉 制作国:日本 出演:佐藤浩市/大森南朋/新井浩文/高橋一生/岸部一徳/石原さとみ/美保純/赤井英和/岸本加世子/杉浦直樹 脚本:大森寿美男 音楽:大友良英 原作:横山秀夫 横山秀夫原作による同名ベストセラー・ミステリーを、佐藤浩市主演で映像化したNHKドラマ。1985年に御巣鷹山で起こった日航機事故を題材に、運命を翻弄されてしまった地元新聞記者たちの波乱に満ちた1週間を描き出す。 すごく観てみたいですが、蔦屋にあるかな。。。 ●余談 ”御巣鷹山”の名を一躍有名にした事故ですが、実は墜落地点は御巣鷹山ではないそうです。 墜落地点は御巣鷹山のすぐ南の高天原山(たかまがはらやま)にある無名の尾根である。後に、この尾根は、上野村村長であった黒沢丈夫によって「御巣鷹の尾根」と命名されるが、実際は御巣鷹山に属する尾根ではない。(Wikipediaより抜粋) ●さらに銀魂的余談 高天原山(たかまがはらやま)と聞いて、高天原(たかまがはら)はここから?と思ったのですが、それ単独で意味がありました。 『古事記』の日本神話と祝詞に於ける天津神の住まう場所である。 地上の人間が住む世界である葦原之中津国や、地中にあるとされる根の国・黄泉に対し、一般に天上にあると考えられているが、明白に天にあるという描写はなく九州、大和、北陸、富士山等実在の場所であったとの説もある。(Wikipediaより抜粋) 先日の「神楽」といい、神道に由来する単語が多用されているのかな? ●感想を読ませて頂いたサイト様 まったり感想日記様 読書とジャンプ様 alice in wordland様 やきまん十の生焼け日記様 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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