ジョン・ハーバーマンのコンサートを聴いて
本日、東京オペラシティでジョン・ハーバーマンのコンサートを聴いてきた。カナダ大使館で聴いて以来、2度目である。ハーバーマンは相変わらずシャイでナイーブ、演奏家という雰囲気はあまり感じない。自然と音楽をこよなく愛するヒューマンなカナダ人という印象である。今日のコンサートは趣が凝っていた。第一部、第二部でソロとアンサンブルの構成。そして光、こと照明の使い方、コントラストがユニークであった。ステージと客席をこれほど暗くしたコンサートは中々お目に掛かれない。殆んど真っ暗な状態からステージのピアノとハーバーマンに秋の夜長を思わせるような淡い光が漂う。始まるや否やハーバーマンのピアノは、カナダの大地と自然の中から生まれた美しい調べが会場を潤うした。聴衆は自ずと大自然の中にゆっくりと溶け込んでゆく。この人の旋律の美しさは、描写的であり実に心情的だと言える。どこまでいっても耳を刺すような刺激音は大よそ皆無である。切ないセンチメンタルなメロディも人の心の内側にある純真な心情からの吐露に聴こえる。カナダの大自然が齎す響き、その由縁からと思わせられる。アンドレ・ギャニオンもそういう印象があった。ハーバーマンはピアノが特別上手い、テクニックが特に優れているというピアニストではないと思われる。ただ確実にいえるのは大海原のごとく返すは波、帰すは波のように曲調が統一的に創られている。最近のヒーリング・ニューエイジ・ミュージッシャンの中では旋律にこれだけ重きを置いた演奏家は少ない。休憩の後、第二部。10名程のヴァイオリンとヴィオラ、チェロ、コンバス、フルートの編成。そしてハーバーマンのピアノ。ストリングスが加味されて、今まで以上に素晴らしいものになった。美しさはより美しさを増し、憂いはより優しくもあり哀しくもあり、鳥肌がたつ旋律美が漂った。新曲が殆んどで、その中でも2曲目の「君のもとへ」この曲の印象は今コンサートの白眉といえた。会場の空気が一変したのを誰もが感じ取ったことだろう。まさに美的スローライフ・ミュージックはここにありと言えそうなハーバーマンの音楽世界である。颯爽とした現在、喧騒も忘れ一服の浄化作用の中で、美しいひと時に出会えたハーバーマンの今日と云う日に感謝したい。取りも直さず、今日のようなストリングス・アンサンブル交えのハーバーマンのNEWアルバムを是非とも製作して欲しいと思った。