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「人間の絆」(モーム)を読んでいる。
この間、読んだ「アンナカレーニナ」に比べるとずっと読みやすいのはなぜだろうか。 翻訳の差もあるのかもしれないが、…ちなみに「人間の絆」は岩波文庫版でよんでいる…それ以上に、ここに描かれた人物やその体験が等身大のものであるということにあるのかもしれない。 主人公フィリップは内気で足がやや不自由という劣等感をかかえている。 幼いころに両親に死に別れ、伯父夫婦に引き取られ、やがて自分の道をみつけるべく旅立っていく。 ドイツに留学し多様な価値観に接するうちに信仰から離脱していくあたりは、もともと無信仰の多い日本とは状況が異なるが、それでも思春期における自分の価値観の模索といった経験は誰にもあるのではないのだろうか。 会計士事務所に入った時の先輩事務員からの虐め、実は根底には事務員の主人公に対する学歴コンプレックスがあるのだが、こんなことは現代でもあちらこちらにある。やがて主人公は会計事務所をやめ、画家になることを夢見てパリに修行に行く。背景にはオペラ「ラボエーム」にある芸術家の卵達のような生活がしてみたいということがある。そういえば、今はともかく、バブルの頃はこんな風に夢を追って簡単に仕事を辞める人もときどきいた。そして画家になる夢の挫折と、より堅実な道への方向転換。醜く貧しい女性の主人公への恋慕…足の不自由な主人公なら自分と連帯できるという思い込みなのだが、こうした恋慕の心理というのも実際にありそうだ。 舞台は20世紀初めのヨーロッパなのだが、描かれているのは、普通の人間にもある青春の「あるある」で、もっと早い時期に読んでおけばよかったと思わせる小説である。 ※ ドラマ「チャンヨンシル」を引き続き視聴している。 やはり才能は表れるもの…で天文に造詣の深いヨンシルは世子(後の世宗大王)の目にとまる。 世宗大王は学問を好んだ王といわれ、ヨンシル、世子など主な登場人物の身分の差を超えた純粋さがここちよい。いつの時代にも、どんな身分でも、夜空を仰ぎ、宇宙の神秘に思いをはせるような人々はいた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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