韓国大河ドラマ「チャンヨンシル」第26話は圧巻であった。
天体観測を重ね朝鮮独自の暦を作成しようとするチャンヨンシルらとそれを妨害しようとする性理学派との対立を背景として、チャンヨンシル(妓生の子としてもともとは奴隷の身分)の才能に嫉妬するチャン家の嫡子ヒジェは偽の観測記録を渡す。日蝕の時刻に合わせて儀式は執り行われることになっており、予測通り日食が起きれば、朝鮮独自の暦の正しさが証明される。偽の観測記録と分かり、とりあえず儀式は延期されるが、刻々と迫る日蝕の時間。
正しい観測記録に基づく計算は間に合うのか。
そして同じころ、性理学派とヒジェの間では科学をめぐる論争が行われる。
論争といってもヒジェは裏切者として死を覚悟してのものなので大変な緊迫感である。
科学は危険だ、と性理学派の大官はいう。科学が発展すれば身分秩序は崩れ、国家は滅びていくであろうと。これに対する反論はこうだ。科学の芽をつんだとしても無駄なことで、人間に探究心がある限り、新しい芽は必ずでてくる。欧州のような科学と宗教との相克の歴史はないが、この頃やはり性理学派の反発はあったという。
ヒジェは科学に対する愛を自覚するとともに、ヨンシルに対する嫉妬が自分を苦しめていただけなのを悟る。モーツアルトの才能に嫉妬するのはサリエリだからであって、サリエリほどじゃなければ嫉妬しないといっても…といってもなんのなぐさめにもならない。
嫉妬がほどよく向上心に結び付き、それが実効をあげるのならよいのだが、嫉妬が単に自分を苦しめているだけということはよくあるのかもしれない。優れた人を憎み、距離をおいたところで結局は自分が損をするだけである。