カテゴリ:J【日本】での想い出
私が人生で初めて撮影した写真は、私の愛犬の写真である。
父の写真機で、その当時の自宅の和室から、庭にあった大きな岩の上で横になっている愛犬ベラをパチリと撮ったのである。 私が小学校一年生ぐらいの時ではなかったかと思う。 その写真は今も手元にあるが、むやみに遠くから撮しているから、大きな岩もベラも、庭の松の大木を背景に、画面の中央に小さく映っている。 この「ベラ」というのが、私が最初に飼った犬の名前である。 私が飼ったと言っても、普通に言えば両親が飼ったのだが、私にとっての最初の飼い犬である。 名前のベラは、モーパッサンの小説、「ベラミー」由縁で、母が名付けたものだ。 ベラミーという小説を読んだことはないのだが、なんでも主人公のベラミーは、性格の悪い美男子で、モーパッサンの自画像的なものらしい。 ベラも我が家に来た、生後間もない子犬の時にはすでに美男子?であったので、ベラミーを略してベラと名付けたのである。 ベラは、ある夜、父が懐に抱きながら持ち帰ってきたのだが、その時から、なんだかシェパード的風貌の子犬で、成人?すると明らかに日本犬なのにさらにシェパードのようなバタ臭い容貌になり、体格も大きく、力が非常に強かった。 その当時、ときどき、雉や鴨や猪などを売りに来た猟師さんが、「この犬をぜひ譲って欲しい」と父に懇願したそうである。 「いい猪猟用の猟犬になる」と言って、一目惚れしたそうである。 もちろん、父はこれを断った。 父がドッグショップで買うときに犬種をはっきり聴かなかったので、よくわからないのだが、日本犬の写真図鑑などで見てみると、紀州犬か、または三河犬ではないかと思う。 しかし、どうもそう言う犬種の平均より、体格がかなり大きいようであった。 よく、テレビで猟師さんが狩猟をする時に、猟犬たちが映るが、みんなかなり痩せた華奢な犬であって、ベラの様な大型でたくましい犬の様子ではない。 ベラの出自?はこうして、今でも謎である。 ほとんどの日本犬がそうであるように、ベラも忠犬であった。 番犬としては強面だったが、主人である私達家族を心から愛して仕えてくれた。 とても性格のいい、頭がよくて優しく、凛々しい犬だった。 犬といっても、性格の良さ悪さなどというものはあって、それは肌でわかるものである。 ベラは、父が大工さんに頼んで作ってもらった大きな犬小屋に住んでいた。 しかし、普段はその犬小屋の屋根に飛び乗って、屋根に寝そべっていることが多かった。 私達が近づくと、「よくいらっしゃいました!」とばかり、大喜びで屋根から飛び降りてちぎれるように尻尾を振る。 ベラは恐ろしく力が強かったから、普通の犬用の革のヒモなどではつないでおけなかった。 父が飼ってきた太い鉄の鎖でつながれていた。 夕方のベラの散歩は私の役目だったが、ベラの散歩というよりは、力の強いベラに引きずられながらの時間だった。 欧州犬は不思議にそう言う事がないようだが、日本犬は飼い主を引きずりながら、懸命に「散歩」する。 余裕が無いのである。 それに、他の犬と出会うとけんか腰になる。 欧州犬は、お互いの臭いを嗅ぎ合うが、いきなりケンカムードにはならない。 この違いが不思議である。 == その二に続く == お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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