■ キスと女性心理の深い闇 【復刻日記】 ある雨の夜、一軒の料理店に立ち寄った 飲みながら食事をしていると、店にレインコートを着た一人の女性が入ってきた 料理屋のママとは親しい様子 大きな瞳の知的な美人である 思わず、「あなたは美人ですね~」と私が声をかけたのがきっかけで、それから二時間ほど話すことになった やはり話題の内容も知的である 彼女は「普段はビールしか飲まないの」と言いながら、私の焼酎水割りにもつきあいだした 最後に「明日の午後6時から6時半の時間に、ここでまた会いましょう」と彼女がいう ちょうど外では雨が降ってきた 彼女が「私は雨傘を持っているから、一緒に帰りましょう」という 相合い傘で歩いて、ある場所にさしかかったら、彼女が「私の家はここからすぐ近くだから、この傘はあなたに貸してあげる」というなり、小走りに闇の中に消えていった 翌朝、玄関に女物の傘を認めた その雨傘を開いてみたら、日傘のような花のプリント柄のものである 夕方、約束の料理店に向かった 恥ずかしい女物の傘も持参である 晴天の日に女物の雨傘を持って歩いているのは、朝帰りの、それも女性の家に泊まったと言っているようなものだ 「しかし、私の場合はちょっとちがうんですよ これは昨晩はじめて会った女性が貸してくれただけですよ 肉体関係なんて無いんですよ 少なくとも今はまだね」と、すれ違う人々に語りかけるようにしながら歩いたが、どれだけ説得できただろうか? まもなく彼女が来て一緒に食べて飲んで、いろんな話をして、4時間ぐらいも経ってしまった 彼女は、バツイチで子どもがいるらしい やがて二人でその店を出て、どこかにちょっと寄って行こうと言うことになり、彼女の知っているというバーに行った彼女はカラオケを歌ったり、他の席の客とも踊ったり、非常に楽しそうにしている 私も、その間にそのバーの若いママさんと気が合って、ママさんと話し込んでしまった そのうちに彼女の入れていたボトルが空いたので、私が新しいボトルを入れて、また飲み直した まだママさんと話し込んでいたら、彼女が私の脇にやって来て、「私は先に帰る」という どうも、ママとばかり話して、彼女と一緒にいないのが気に入らないらしい あわてて、私も彼女と一緒に出ることにした 外に出て並んで歩いていると、彼女が私のコートのポケットに手を入れてきた ポケットの中で、お互いに手を握ることになった 手を握り合って楽しく歩いた 昨夜彼女と別れた場所にまで来たら、彼女はここから一人で帰るという しかし、ポケットの中では手を握りあっているし、私から【もう少し送ってゆこう】という妥協案を提示して、そこからは暗闇の道になるのだが、二人で歩いてゆくことになった 途中で立ち止まって彼女にキスをした コートのポケットの中で手を握り合っているのだから、こんな状況で何もしないままでは、女性に失礼である こういう場合は、紳士たるもの、私は日ごろこんな事は決してしない人間だが、貴方があまりにも魅力的すぎるから、この私でも、心ならずも、こんな風に欲望を抑えきれないで野獣になってしまったのです・・・という立場に身を置いて行動しなければならない 彼女は、「ダメ!」と小さく言ったが、特に逃げるそぶりは無く、しばらして多少消極的ながらキスに応じてきた しばらくして気がつくと、二人のキスシーンは、ちょうどそこは街灯の真下で、なぜか深夜なのに高校生風の若い女の子が自転車に乗って通りかかり、私たちを見ている 「早くあっちへ行け シッシ!」という所作をしたら、その子は闇の中に消えていった 早く勉強をしてほしい それでも街灯の真下でのキスというのは、地政学上、他者からの攻撃に身をさらす脆弱な体勢だと判断したので、少々表面移動をして、今度は電灯の下ではなくて、ある家の門の前で、またキスをしてみたら、また「ダメ!」と言いながら、また応じてきた やはり「女性のダメ」は、「イエス」または、「どうぞ」または、「どうしても」や、「お願い」に相当する言葉のようだと学習した (実は以前から知っていたんだが) このように小刻みにより有利な地点を求めて移動を繰り返しながら、周辺の状況を頭にインプットしながらキスを続けたのだが、そのうちに彼女はガクンと脱力系になってしまって、私が彼女を抱きとめることになった ~~~~~~ 私はキスが(だけは)うまいらしい 以前、ある女性に、「この前のキスは最高だったわ 今まであんなキスをしたことが無いわ 貴方はそれほどいい男でもないけれど(ウルサイ!)、あのキスをしたいために今日は来たのよ」と言われたことがある 生意気な女である その女性と最初にあったとき、ホテルで食事し、まともな話をし、最上階で飲んでまともな話をし、それでは帰りましょうか?と高層階用の下りのエレベーターに乗ったときにキスをした 他にだれも乗客がいなくて二人きりだったから、これもマナーとして彼女を抱き寄せてキスをしたのだ それまでは私に距離を置いたような態度のその女性が、キスには即座に熱烈に答えて来たのは、想定外だった それでもお返しとして秘術を尽くしたら、彼女もしばらくして完全脱力状態になった こういう場合は、なるべく小柄な女性の方が取り扱いが楽である エレベーターが終着階に到着してドアが開いたので、あわててキスをやめて、彼女を突き飛ばしてしらんぷりをして(冗談)、また上昇のボタンを押した エレベーターは上がったり下がったりしている それを数回、繰り返した ~~~~~~~~ キスとは、欲望先行で女性の唇をうばうことではなく、お互いの口で精神的に愛情を交わし合う、もう一つのセックスの形態である 男は自分が快感を感じるより、女性に感じてもらって、その反応に興奮するというか、プライドを満足させる、達成感を感じる動物だ つまり自己犠牲の精神に満ちた、崇高な生き物と言える 脱力しても平気な、自己本位な動物ではないのである キスだけでなくセックスでも同じである コホン! ~~~~~~~~ ということで、キスには自信があったので、もう少し「成果」を試そうと脱力中の彼女にディープキスをしたら、なぜか彼女がとつぜん泣き出して、闇の中に走って逃げて行ってしまった どうして「ダメ!」なのか? キスに応えながら、どうして泣いて去ったのか? 女性心理の闇は、またしても深い ~~~~~~~~~ その後のストーリーもあるのだが・・・ 敢えて書かずに 今日は、これくらいにしといたるわ ―――― ◇ ―――― 今日の俳句 キスをしてもひとり 不眠亭 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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