カテゴリ:🔴 M【メモ・サブノート】
<1月4日>(金)
○これも年末年始の読書から。『想定外 なぜ物事は思わぬところでうまくいくのか?』(ジョン・ケイ/ディスカヴァー・トゥエンティワン) ○名著というものは、部分的にはひとつの旋律が何度も繰り返され、全体としても同じトーンで貫かれているものなのだそうだ。それでいくと、本書は掛け値なしの名著であろう。題名"Obliquity"は「回り道」とでも訳した方がよかったような気がするが、本書の至るところで繰り返されているメッセージは、「直線的な行き方よりも、回り道の方が優れている」である。 ○幸いなことに、われわれはその手の実例を豊富に知っている。なぜリーマンブラザーズが失敗して、ゴールドマンサックスは生き残っているのか。前者は利益を追うことを最優先し、後者はチームワークを称揚する企業文化を持っていた(p76)、というのはごく一例に過ぎない。利益追求を最重要視すると、それが実現されてしまったときに、あるいはそれが不可能になってしまったときに、目標が失われてしまう。だから企業は、非常に崇高な理念(ときには普通の人が理解しにくいようなもの)を掲げている方がいい。利益はその結果としてついてくる。 ○こんな主旋律に乗って、ビジネスや人生に関するさまざまな「ちょっといい話」が紹介される。これが楽しい。思わずいくつか紹介したくなる。 ●アメリカ内務省の国立公園管理局は、当初「山火事の撲滅」を目標とした。しかし火災をいちいち消火していると、かえって発生件数が増えてしまう。そこで目標を変えた。「山火事をコントロールすること」にしたのだ。具体的に言うと、「放火による火災は消火するが、自然発火によるものは放置する」。 ●生物学者のダーウィンは、「結婚は大いなる時間のロスだ」と考えていた。そして結婚がもたらすメリットとデメリットを克明にノートに記し、「一生を家族のために働き蜂として過ごすなんてとんでもない」と書いた。しかし最後には、「結婚だ、やっぱり結婚だ。証明終わり」と書いた。その翌年に結婚し、夫妻は10人の子供に恵まれた。 ●米海軍のストックデールは北ベトナムで捕虜になり、拷問に耐え抜いて7年後に生還した。生き残れたのは、「拷問に対する備え」「現実的な思考」「今日死ぬかもしれないという覚悟」の3つだが、彼はこう理解していた。「クリスマスには解放される、と期待する楽天家には死が待つだけ」。溺れる者が藁をつかんではいけないのは、藁だと分かった瞬間に諦めて沈んでしまうからであった。 ●著名なビジネススクールで意思決定を教えている教授のところへ、転職の誘いがあった。さっそく、友人に相談した。友人曰く「それこそ君の専門だろう」。すると当人曰く、「いや、これは真面目な意思決定の問題なんだ」 ○訳者の青木高夫さんは本田技研の社員。今回もまた、楽しい本を世に送ってくれました。多謝。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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