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リスク 1:欧州の政情
欧州経済は、ユーロ圏危機の時と比べてかなり良くなっている。だが、政情は、今やず っと悪くなっている。このことは、草の根レベル、EU 内の関係、そして対外関係という 異なる 3 つのレベルにおいて言えることだ。 ■ 草の根レベルでは、欧州全体を通じて国民の怒りが募っている。それには一定の社会的 不安定が伴っているのは確かだが、足元の問題は、勢いを増しつつある一連の政治運動に ある。極左、極右それぞれあるが、いずれも EU 懐疑派であり、政治的正統性を失った既 存政党に対して挑戦状を突きつけている。その台頭は、劇的であり、しかも勢いが衰えて る様子はなく、2015 年には政治を動かすようになる。特にギリシャでは「シリザ」党が 解散総選挙に勝利して連立政権に参加することになる可能性が高いし、スペインでは「ポ デモス」党が 2015 年末の総選挙で政権を掌握することもありうる。 より一般的には、こうしたポピュリズムの高まりは、既存政党としても権力維持を確か なものにするために欧州懐疑主義的な姿勢を取ることを余儀なくされる。こうした傾向は、 EU の縁辺諸国でも中核諸国でも明らかだ。フランスでは、国民戦線(FN)への支持の高 まりが、国民運動連合(UMP)が 2016 年に政権を奪還するチャンスを大きくするために 右傾しないといけないことを意味する。英国では、英国独立党(UKIP)の挑戦に直面し ているデビッド・キャメロン首相は、5 月の国政選挙を勝つために移民問題についてずっ と強硬な路線を取り、EU にとどまるか否かについての国民投票を支持するよう姿勢を変 えている。あのドイツでさえも、「ドイツのための選択肢」(AfD)党の台頭が、アンゲ ラ・メルケル首相の欧州統合深化及びユーロ圏安定を支持する余地を狭くしている。 ■ EU 加盟国間の摩擦も激化している。欧州にとって最も望ましいのは、ドイツ、フラン スおよび英国がリーダーシップを発揮するために協力することだが、こうした環境下では その可能性がうんと低くなっている。フランスは、財政赤字目標を達成できず、またオラ ンド大統領の支持率が(フランスの大統領としては史上最低の)13%にまで下がってい るので、ドイツが財政について緊縮政策を景気対策より優先することに対して何も言えな い。英国は、自らの EU 加盟国としての地位について未解決の問題を抱えているので、動 かない。そして縁辺諸国におけるよりポピュリズム色の濃い新政権は、年金改革、財政均 衡化、その他ユーロ圏危機後、苦労の末可能になった立法を覆していくことに務めること になる。今年は、EU、そしてドイツ、フランス、イタリアその他一連の EU 加盟国政府 の間の財政均衡化を巡る争いと比べれば、米国の民主党と共和党さえもが仲のいい 1 つの 家族に見えてくる。 ■ 対外政治環境もまた、より厳しいものになる。ロシア危機はエスカレートしていくだろ うし、欧州、ロシア双方の軍の間で安全保障上の事件が起きる可能性への懸念(その懸念 は、中国とそのアジアの近隣諸国との間での衝突への懸念よりはるかに強い)のせいで、 欧州としてはエスカレーションに起因する経済的影響への対応がおよそできる状況にない。 ■ イスラム過激派によるテロの脅威は、シリア・イラクにおける戦闘に直接参加している欧 州市民の数、そしてそれぞれ国内におけるイスラム人口の大きさを考えると、中東外のど こと比べてもはるかに大きな懸念だ。また、ここでおそらく最重要点として挙げられるの は、米国と欧州の関係が悪化していることだ。米国のユニラテラリズムは欧州にとって大 きな問題だ。米国政府は、健全な欧州経済を守ることより、ロシア政府を罰することの方 に関心がある。そしてスパイ活動及び無人攻撃機の使用が米国政府に対する欧州住民の態 度を悪化させている。米・英間は、これらの諸問題についてより立場が近いが、欧州の将 来にとってはるかに重要な米・独間の隔たりがそれ以上に広い。 ■ したがって、欧州のリーダーたちは、国内の反対、政府間のいさかい、そして外からの 脅威に対応していかないといけない。地政学的動乱の年である 2015 年は、さらに深刻な 危機が発生することになる。欧州は、それらのほとんどから打撃を受けることになる。そ こで欧州の政情を今年のトップ・リスクの筆頭に挙げることにしたのだ。 ―――― 私の感想 ―――― このリスク予測は,基盤として,正しかった 具体的な事象としては ざっと俯瞰しただけで ■ ギリシャ危機 ■ ロシアのクリミア併合強行 ■ イスラム国のさらなる台頭 ■ 対イスラム国戦略の各国間の齟齬 ■ パリなどのイスラムテロのインパクトが欧州を揺さぶった ■ 膨大な数のシリア難民の発生と移動 ■ VW問題の発生とそのドイツへの財政的インパクト ■ したい放題のプーチンロシアへの対応 ■ イスラム系移民と欧州原住民(笑)との相克 ■ 英国のEU離脱危機 ■ EU求心力の喪失と解体危機 EUは、まるで、八つ裂きの刑に処せられているかのように見える お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.12.27 08:48:39
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